LINEモバイルは3月14日、東京都内で記者発表会を開催し、MVNO事業の現状と近い将来のサービス展開に関する説明を行った。LINEやSNSがパケット消費なしで使えるとして話題を集めたLINEモバイルだが、実態はどうなっているのか、確認してみよう。

LINEモバイル 代表取締役社長 嘉戸彩乃氏(左)と女優 のんさん

カウントフリーは好評

LINEモバイルは2016年9月にサービスを開始して以来、着実に回線契約数を増やしてきている。具体的な数字は公表されていないが、満足度が93%に達しているほか、月間平均解約率も1.2%以下と低い水準を表しており、ユーザーから高い評価を得ていることがわかる。

割合としてはコミュニケーションプランが約66%と増えており、音声プランも約65%と優位を占めている

人気を支える要素としてLINEモバイルは、(1)TwitterやFacebookなどのSNSが無料で使える「カウントフリー」、(2)安定した通信速度、(3)24時間/365日対応可能なチャットサポート「いつでもヘルプ」などの存在を挙げた。

また、開始後半年経過した時点での傾向として、月額基本料金の平均値が上昇している。これはデータ専用回線、音声通話回線を全て平均したもので、安価なデータ通信回線よりも音声回線の割合が高くなっているという。これは他のMVNOにも同じ傾向がうかがえるが、LINEモバイル回線を「通話もできるメイン回線」として利用しているユーザーが増えていることを表している。

音声ユーザーの割合が高まったことで基本料金が増えている。この傾向は他のMVNOでも同様だ

こうした傾向を受け、LINEモバイルでは今後、さらなるサービスの拡充と認知の向上を目指した施策を発表した。まず第一に、カウントフリーの強化だ。LINEモバイルでは基本的にすべてのプランでLINEが使い放題だが、さらにTwitterやFacebook、Instagramが使い放題になる「コミュニケーションフリープラン」(1,110円/月~、以下価格はすべて税別)と、これらに加えて「LINE MUSIC」の通信分が使い放題になる「MUSIC+プラン」(1,810円/月~)がある。

LINEモバイルでは、今年初夏をめどにMUSIC+プランの強化を予定しており、LINE MUSIC以外の音楽配信サービスもカウントフリーにするとしている。対象となる具体的なサービスは今後アナウンスされるということだが、iTunes MusicやGoogle Play Music、Amazon Prime Music、AWAなどが対象になると予想される。

radikoなどのラジオサービスも配信扱いになればさらにメリットは大きそうだ

また、音声通話ユーザーの増加に合わせる形で、今年初夏をめどに通話定額オプションの提供が決定した。こちらも詳細については追ってアナウンスされるということで具体的な内容は不明だが、他社を参考にするならば、月額500~700円程度で1回5分前後の通話が何回でもかけ放題になるというイメージが近そうだ。

LINEユーザー同士であればLINEの通話がもともと無料で行えるため、一般電話とのやりとりをどの程度行うかで利用を考えたい

また3月15日より、販売チャネルの拡大を目指して、ビックカメラおよびヨドバシカメラの全国10店舗で「即日受け渡しカウンター」を開設する。これまではネット専売だったが、より広いユーザー層に訴求できることになる。こうしたユーザーとのタッチポイントは、全国100カ所以上に拡大していく予定であるという。

最後にプロモーションの実施ということで、LINEモバイルが初のTV CMを展開することを発表。CMに登場する女優ののんさんが登壇し、「愛と革新。LINE MOBILE」と題するCMが公開された。

新CMに出演するのんさん

法的懸念もあるが……

今回の発表内容は、通話定額や対面カウンターの設置など、他社の戦略やサービスを後追いするものが多い。MUSIC+プランの対象が増えることについては、他社のサービスを利することにもつながりかねないため、やや意外ではあったが、ユーザーあたりの月額利用料金を高めていくためには有効な手段になるだろう。

ただし、今回の発表時に具体的な金額などを発表できなかった点には、とりあえず発表しておけ、という見切り発進的なものを感じさせ、もう少し腰を落ち着けて、きちんと内容が決まってから発表したほうがいいように思われた。

個人的懸念としては、カウントフリーの正当性だ。同様のサービスを展開するMVNOは増えているが、一方で特定の通信のみを無料扱いとするにはパケットの送受信先を特定しなければならず、通信の秘密を守るべきプロバイダー側の義務違反になるのではないか、という声も上がっている(LINEモバイルでは契約時にユーザーから許諾を得ているという扱いになっていると主張している)。

今のところ大手キャリアが後追いしていないこともあり、MVNOの差別化に必要と見てか、通信を司る経済産業省は静観を決め込んでいる。サービスが過剰になって法的な正当性が問題になり、カウントフリー自体が規制対象になった場合、どのように他社との差別化を見せられるか、いわばMVNOとしての基礎体力面での施策を示唆してほしい。