次世代のモバイル通信方式「5G」では、LTEの1000倍となる10Gbpsもの高速通信を実現するとされている。それだけの通信速度を実現するにはどのような技術が用いられるのか。また普及に向けた課題はどこにあるのだろうか。

主目的は増大するトラフィックへの対処

現在、携帯電話業界で標準化が進められ、国内では携帯大手各社が2020年の商用サービス導入を目指している、次世代のモバイル通信方式「5G」。現在主流の4G(LTE-Advanced)と比べ大幅な性能の向上が見込まれているが、中でもやはり注目されるのは、通信速度の高速・大容量化である。

5Gは現在、標準化作業の真っ最中だが、その目標性能はLTE-Advancedの1つ前の方式である「LTE」の、およそ100倍となる10Gbps以上とされている。日本の大手3社の通信速度を確認すると、現在は理論値で600Mbpsを超える程度が最速値となっていることから、それよりはるかに高速な通信速度を実現しようとしていることは理解できるだろう。

また通信速度の実測値に影響する通信容量も、LTEの1000倍以上に設定されていることから、同時に多くの人が高速通信をしても速度低下の影響を受けにくくなる。大容量化が進めばビット当たりの通信コストも下がりやすくなるし、都市部のような混雑した場所での高速化にもつながりやすいことから、5Gの恩恵は大きいといえよう。

NTTドコモが打ち出す5Gの目標性能。通信速度はLTEの100倍、通信容量は1000倍を目指すとしている

だが冷静に考えると、現在のスマートフォンで動画などの大容量コンテンツを視聴する分には、4Gの通信速度でも十分だと感じることが少なくない。通信コストを下げてほしいというニーズはあるだろうが、これ以上通信速度を上げることに、あまり意味を感じない人も少なくないのではないだろうか。

にもかかわらず、なぜより高速・大容量の5Gが必要とされているのかというと、スマートフォンの利用が今後も増え続け、通信トラフィックが増え続けると考えられるからだ。確かに今よりスマートフォンを積極利用する人が増えなければ、現状の4Gでも問題はないかもしれない。だが今後はより多くの人が、スマートフォンでリッチなコンテンツを利用するようになるだろうし、コンテンツを提供する側も通信速度の高速化に合わせて、4K映像やVRなど、大容量を活用したコンテンツ提供を進めてくるだろう。

そうした場合、現状の4Gではいずれ通信容量が上限に近づく、あるいは上限を超えてしまうという事態が起き、通信速度が劇的に遅くなったり、ネットワークに障害が発生してしまったりと、さまざまなトラブルが起きる可能性が高まってくる。実際2020年には、モバイルの通信トラフィックが2010年の1000倍に達するとの予測もあり、そうした時代に備えるためにも新しい通信方式が必要とされているわけだ。