NVIDIA GeForce GTX 10シリーズに久しぶりの新製品が登場した。GeForce GTX 1080 Tiは、10シリーズの最上位となるGPUだ。TITAN Xを一部上回り、GeForce GTX 1080より35%増しをうたうモンスターGPUは、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。

GeForce GTX 1080 Tiのスペックを確認しておこう。まず、GPUコアはTAITAN Xでも用いられているGP102であり、そこから一部を無効化した構成だ。価格度外視のTITAN Xと異なり、量産性も求められるための割り切りと言えるが、違いはそれほど大きくない。一方、これまでの最上位GPU「GeForce GTX 1080」とはコア(GP104コア)も異なり、スペックが大幅に引き上げられている。

製品名 GeForce TITAN X GeForce GTX 1080 Ti GeForce GTX 1080
GPUコア GP102 GP102 GP104
トランジスタ数 120億 120億 72億
CUDAコア数 3,584基 3,584基 2,560基
GPC 6 6 4
SM 28 28 20
テクスチャユニット 224 224 160
ROPユニット 96 88 64
ベースクロック(MHz) 1417MHz 1480MHz 1607MHz
ブーストクロック(MHz) 1531MHz 1582MHz 1722MHz
メモリタイプ GDDR5X GDDR5X GDDR5X
メモリスピード 10Gbps 11Gbps 10Gbps
メモリ容量 12GB 11GB 8GB
メモリ接続バス(bit) 384bit 352bit 256bit
メモリ帯域幅(GB/s) 480GB/s 484GB/s 320GB/s
最大消費電力(TDP:W) 250W 250W 180W
補助電源コネクタ 8ピン+6ピン 8ピン+6ピン 8ピン

GeForce GTX 1080と1080 Tiの比較でポイントとなるのは基本的なスペックだ。GPUクロックは若干低いものの、GeForce GTX 1080 Ti(つまりGP102)では、GPCやSM、それに伴うCUDAコア数の増加、テクスチャユニット、ROPユニットの増加、さらにはメモリバス幅の拡大など、大きく強化されている。また、OC性能もアピールされているので、カードメーカーのオリジナルクーラー搭載モデルではさらに高クロックのものと考えられる。

スペック強化のため、TDPはエンスージアストセグメントの250Wになる。GeForce GTX 1080はTDPが180Wで、補助電源コネクタも8ピン1つで済んだが、GeForce GTX 1080 Tiは8+6ピン構成となる。搭載する電源は、1クラス大出力のものを選んだほうがよい。

なお、メモリ容量も拡大しており、11GBになった。TITAN Xの12GBからは1GB少ないが、これだけの量を搭載していれば、いくら4K解像度狙いのハイエンドGPUでもしばらく大丈夫だろう。

メモリ使用量の目安が表示されるタイトルで調べたところ、いくつかのものでは8GBを超える数値を示すものもあった。4K解像度で画質を最大とするような設定、さらにNVIDIA PCSSやTXAAのようにメモリの節約につながる技術をオフにした設定なので、あまり現実的ではないが、こうした環境が選べるようになった現状、最上位GPUであればそれをカバーできることが望ましい。

GPU-Zから見たGeForce GTX 1080 Ti

11GBというのは切りの悪い数だが、そもそもメモリバス幅が352bitと変則的なのでこれに合わせた格好となる。384bitのTITAN Xから32bit削減された格好だ。メモリチップの数もこれに合わせて1チップ少ないことになる。そのほか、電源回路が7フェーズ、FOUNDERS EDITIONではヴェイパーチャンバーを採用したGPUクーラーが組み合わされ、設計上のOCの目安として2GHzという値が示されている。

GeForce GTX 1080 Ti FOUNDERS EDITIONをチェック

評価機として届いたのは従来リファレンスと呼ばれていた「FOUNDERS EDITION」(FE)である。まずはこれが各社から登場し、後々、オリジナルクーラー搭載モデルが登場するものと見られる。ざっと見た印象としては、GeForce GTX 1080のFEモデルから、補助電源レイアウトが変わったほか、GPU型番ロゴが変わったというが違うが、それ以外は変わらない。ちなみに、ロゴ部分の「Ti」はちょっと小さい。FEのデザイン上、同サイズのフォントでは収まりきらなかったようだ。

GeForce GTX 1080 Ti FOUNDERS EDITION

「Ti」がちょっと窮屈

ディスプレイ出力端子は、DisplayPort×3、HDMI×1。DVIが省略されているのはTITAN Xに準じた仕様であり、もはやエンスージアストにDVIは不要という考えのもとだろう。どうしてもDVIを利用する場合はDisplayPort→DVI変換アダプタを用いることになる。DVI端子がない分、後方排気用のスリットスペースも拡大している。

DisplayPort×3、HDMI×1で、DVIのないブラケット

カード長は、リファレンス仕様なので266mm。それなりに大型だが、おそらくオリジナルクーラー搭載カードでは、これよりも長い基板のものも多く登場するだろう。オリジナル基板モデルに比べれば、搭載難易度は低い。

FOUNDERS EDITIONの表・裏

GeForce GTX 1080のオリジナルクーラーモデルであるMSI「GEFORCE GTX 1080 ARMOR 8G OC」よりも基板が短かった

SLI端子は2つ。ここは変わらない

補助電源端子は8+6ピン

ではベンチマークで性能を見る前に機材の紹介を。今回はGeForce GTX 1080と比較を行なう。NVIDIAの発表ではTITAN Xを上回るとうたわれているが、これが確かめられないのは残念だが、TITAN Xはかなり高価な製品であり、GeForce GTX 1080の方がユーザーも多いのでちょうどよいだろう。検証に用いた主な機材は下の表を参照して欲しい。

CPU Intel Core i7-7700K
M/B MSI Z270 KRAIT GAMING(Intel Z270)
メモリ Crucial Ballistix Sport 32GB Kit BLS4K8G4D240FSA 8GB×2
グラフィックスカード GeForce GTX 1080 Ti FOUNDERS EDITION MSI GEFORCE GTX 1080 ARMOR 8G OC
ストレージ Crucial MX300(Serial ATA 3.0、3D TLC、750GB)
電源 Seasonic SS-1000XP(80PLUS Platinum、1000W)
OS Windows 10 Pro 64bit