以前、アウトドアショップの方とお話しさせていただいたところ、あるレジャーの人気が高まっているという。それは、プレジャーボートや水上オートバイなどを楽しむマリンレジャーだそうだ。

マリンレジャーというと、“富裕層に限られた遊び”というイメージになりやすい。もちろんそういう層がマリンレジャーを牽引しているが、じわじわとファンの裾野を広げているらしい。前述のアウトドアショップのスタッフも、ライフジャケットやフィッシングタックルの売れ行きから、それを感じているのかもしれない。

というわけで、3月2日(木)から3月5日(日)まで開催される「ボートショー 2017」を訪れた。実は、ボートショーについては昨年も訪れている。前回以上の盛り上がりを感じられれば、マリンレジャーが上向いているということを実感できるかもしれない。

会場に踏み入れてみると、「出展社が増えたかな」という印象を受けた。筆者が訪れたのは初日となる3月2日の木曜日だったが、平日にもかかわらず多くの来場者がみてとれた。だが、この手の合同展示会の場合、初日に多くの関係者やメディアがドッと押し寄せるので、純粋な“来場客”とはいえないかもしれないが……。とはいえ、ボートショーは土曜日・日曜日にも開催される。この両日に訪れる方々こそ、真に“マリンレジャーを楽しみたい”と思っている層といえるだろう。

左からヤマハ発動機ブース、ヤンマーブース、ホンダブースで展示されたボート

左はトーハツブースで開かれたトークショー。ボート以外の展示も注目を集めていた

マリンレジャーのさらなる発展を目指すには

ちなみに一般社団法人 日本マリン事業会(JMIA)が事前に発表した資料によると、今年は53,000人の来場者を見込むという。2014年が35,400人だったので2~3年で来場者数を伸ばしたことになる。今後も5万人を超えるイベントとして定着させたいと、意気込みをみせる。出展社数も2014年の175社から今年は210社の予定だとした。

会場ではJMIAの小川昭氏に話をうかがった。それによると「マリンレジャー市場は、リーマンショック以前の水準にまで戻りました」という。たとえばレジャー用ユースを意識したモーターボート(国内メーカー)だが、2007年には90億3,700万円の出荷金額だったのが、リーマンショック後の2009年には50億1,500万円、2011年には48億5,600万円までに落ち込んだ。特に2011年は東日本大震災が生じた年。繰り返し放映された船体が津波に流される映像が、購買意欲に大きく影響したことだろう。だが、そこから徐々に需要が回復し、2016年には94億9,900万円まで回復した。

また小川氏は、PWC(パーソナルウォータークラフト)が伸びているという。PWCなどというとピンとこないが、つまり水上オートバイのことだ。「複数の女性だけのグループで海を訪れ、水上オートバイを楽しんでいる光景も珍しくはありません」(小川氏)とのことだ。冒頭で“ファンの裾野を広げている”と記したが、こうした女性も含まれる。

さて、今後もマリンレジャーは発展していくのだろうか。

カギは小型船舶免許取得者を増やすことにあるといえる。モーターボートにしろ、水上バイクにしろ、免許がないことには始まらない。いかに取得者を増やすかが、今後のマリンレジャー市場を伸ばすポイントとなる。

では、年間免許取得者どのくらいだろうか。JMIAの資料によると、先ほど記したモーターボート出荷額とまったく同じ動きとなっている。2008年は5万5,987人だったが、リーマンショック後は5万1,271人に減少。そして震災のあった2011年は、4万7,263人まで減ってしまっている。やはり震災が与えた影響は大きい。だが、その後は徐々に回復。2016年には5万6,131人と、リーマンショック前の水準に戻った。

いずれにせよ、安全・安心して遊べる環境の確保・創出、水質にやさしいエンジン開発、廃棄船舶の問題、不足しがちな係留場所など、業界全体で取り組まなくてはならない課題は多い。