アニメ映画『劇場版 トリニティセブン-悠久図書館と錬金術少女-』の劇中音楽やキャラクターソングを担当したテクノポップユニット・TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが2月27日、都内で行われたトークイベントに登壇し、楽曲制作の裏側やTVシリーズも含めた作品への思いを語った。

左から、吉田雄哉プロデューサー、松井洋平、フジムラトヲル、石川智久

『トリニティセブン』は、サイトウケンジ氏が原作を務め奈央晃徳氏が作画を担当する漫画『トリニティセブン 7人の魔書使い』をもとに2014年に放送されたTVアニメ作品。普通の高校生だった主人公・春日アラタが、ある危機に瀕したことから魔導学校・王立ビブリア学園に入学し、そこで7人の凄腕の魔道士少女"トリニティセブン"たちと学園生活を送りながら、バトルに赴く日々を描き、注目を集めた。劇場版となる本作では、サイトウ氏の書き下ろしによる、封印が解かれた"白き魔王"とアラタたちの激烈な闘いのエピソードが映し出される。

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDは、TVシリーズから劇伴やエンディングテーマ(各キャラクター名義の声優がデュエットした楽曲を4曲)を担当。これらが好評を獲得したことを受け、リミックスアルバムやTVシリーズでは流れなかったキャラクターソングなどもリリースした。本作でも冒頭のイントロダクション部分からクライマックスに至るまで、テクノやシンセポップのみならず、アンビエント、エレクトロニカ、チルウェイブといった、物語を彩るさまざまな電子音を響かせている。

レンジにこだわりシンフォニックに"シアター感"を演出

「NO MUSIC,NO TRINITY」と題された今回のイベントに登壇したのは、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのメンバー・石川智久、フジムラトヲル、松井洋平の3人とエイベックス・ピクチャーズの吉田雄哉プロデューサー。まず本作を見た感想を問われた石川が「ミュージック・ビデオみたい、いつ鳴りやむのかって心配になるくらい本当に音楽を目いっぱい使っていただいていて……」とコメントすると観客からは大きな拍手がおくられた。

TVシリーズの劇伴をアレンジした楽曲も多い本作。メガホンを取った錦織博監督からは、幾つかの曲に関する要望があったようだが、その他のオーダーはなかったという。これについて、松井が「頼まれてもいないのに、石川くんが『劇場で流すならこれくらいの音でないとダメだ』とアレンジを入れたんです。『これが流れないと嫌だ』と。いつもそうですが、彼はお客さんよりも自分が一番納得したいんですよ」と説明すると、当の石川は「そうでないとアーティストとは言えないからね」とキッパリと主張。「シンフォニックでないと"シアター感"がないじゃないですか」とアレンジに厚みをもたせたことを明かした。

その"シアター感"を演出するために石川がこだわったのは「レンジ(高低など音の幅や範囲)」。「オーケストラになると広いでしょ?」と問いかけながら、「シンフォニックにすると(レンジが)広くなるので、耳心地が良くなりますから」と解説し、劇場作品の中で鳴る音楽としての説得力を持ったサウンドを追及したことを告げた。

新キャスト・日高里菜も参加した新曲「AMAZING MAGUS」制作秘話

錦織監督からあった要望の一つは、TVシリーズにおける楽曲「MAGUS MODE」の2作目と位置付けられる新曲を作ること。他の曲は使用シーンがあらかじめ錦織監督から決められていたところ、この要望から生まれた新曲「AMAZING MAGUS」は完成後に流れる場面が選定されたようだ。

「MAGUS MODE」も声優キャストのボイスを断片的に切り取り、デトロイト・テクノ風のサウンドの随所で鳴らす手法が取られているが、この声の収録は3人にとってもやや苦労が伴ったという。フジムラはこの作業過程を「アフレコする前に訳の分からない単語をしゃべっていただいて、こちらもそれを録って曲に貼り付けて……」と説明。続けて、「キャストの方も大変だったと思います」と労った。

これに、石川が「今回は新メンバーの方もいらっしゃるので」と本作でシリーズ初参加となった日高が新曲に参加していることをアピール。それを受け、フジムラは「なぜか『AMEZING MAGUS』と一言お願いしますなんて言われて、これがどうなるのかさっぱりといった心境だったと思いますよ」と言葉を重ねた。