【レポート】

ラーメン店にもMicrosoft Azure - 阿久津良和のWindows Weekly Report

B2B系企業を取材していると、「AI」「機械学習」「クラウド」「ロボティックス」といった流行り言葉をよく耳にする。我々消費者には日常生活で使われるようになって初めて体験できる分野だが、少しずつ街中でも利用シーンが増えつつある。今回は趣向を変えてMicrosoft Azureの導入事例を紹介したい。

ここはビジネス街のラーメン店「鶏ポタラーメンTHANK 大門店」。日本マイクロソフトとヘッドウォータースは、AIとロボットを活用したクラウド型顧客おもてなしサービスの実証実験を1月から開始した。Microsoft AzureのAI機能「Cognitive Services」とヘッドウォータースが提供するクラウドロボティックスサービス「SynApps」を組み合わせたソリューションである。

「鶏ポタラーメンTHANK 大門店」に設置された卓上ロボット「Sota」くん

このサービスを利用するには、まずスマートフォンのアプリケーションで自分の顔を撮影し、事前登録を行う。次に接客する卓上ロボット「Sota」に顔を認識させると、店員のタブレットに顔写真や来店回数が転送される。取材時は、3回来店した人にトッピングを無料提供していた。

事前登録を行うと「Sota」くんの前に立つことで、顔認識が行われる

現時点では券売機と連動していないため、客は自分で料理を注文しなければならないが、客の好みや傾向などはクラウドに蓄積される。ヘッドウォータースの担当者は「将来的には (券売機との) 連携を目指す」と説明していた。

こちらは店員が持つタブレット側の画面。注文データや麺の堅さなどの設定する

サービスの仕組み自体はシンプル過ぎるほどだが、そこには大きな可能性がある。鶏ポタラーメンTHANK店主の田邉雄二氏は「新人店員でもデータを見ることでお客さまが常連であることがわかり、『いつもありがとうございます』と一言添えられる。ベテラン店員なら、忙しい最中に常連さんに気付けないことがなくなる」と語る。

クラウドに蓄積されるデータは「Power BI」で可視化され、年代や性別ごとの注文内容や回数、客が訪れる時間帯や平均単価などが一目でわかる。既存店舗の改善や新規店舗出店時の方針選択などに役立つ。ただし、「データはデータ。顔認識に頼りすぎるとぬくもり感がなくなってしまう」と、同店ではあくまでもツールの一つとして活用するつもりだ。

蓄積データをPower BIで可視化した状態。多くのデータから注文傾向などがわかる

よく訪れる店で常連扱いされると心地良さを覚えるものだ。しかし、せっかく馴染み客になっても店員が変われば対応も変わり、がっかりした経験はないだろうか。日本マイクロソフト+ヘッドウォータースの顧客おもてなしサービスは、この隙間を埋める可能性を秘めている。現在、Microsoftは自然言語解析ツールとして、入力文章の分類やキーワード抽出を行う「LUIS (Language Understanding Intelligent Service)」をコグニティブサービスの一つとして用意しているが、これを使って英語など外国語対応を目指すという。

「LUIS」を使ったデモアプリケーション。英語でお薦めを聞くと、同じく英語で説明し、注文・麺のかたさまで選択できる

このようにAIやロボティックスは既に身近な場所で、我々の生活を便利にする活躍が始まりつつある。MicrosoftはAIに対して「みんなのAI」を標榜し、実現に向けてロボットをクラウド側から制御するCloud Robotics Azure Platform V1 SDKなど多くの取り組みを加速させている最中だ。"AIでビジネスが変わる"も魅力的だが、我々消費者には"AIで日常生活が快適になる"の方が刺激的なキーワードではないだろうか。

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