CoreプロセッサシリーズでCPU倍率がロックされてない「アンロック」の目印は型番末尾の「K」。これまでの「K」付きはCore i7とi5の最上位のみに用意されていたが、ついにCoreシリーズで最も手頃なi3にも解禁された。それが「Core i3-7350K」だ。

Core i3-7350Kの実勢価格は2万円台前半から半ばといったところ(執筆時点)。Core i7-7700Kが4万円超、Core i5-7600Kが3万円弱といった現在、2万円台でOCに対応したCore i3-7350Kはちょっと面白い存在だ。今回はそのパフォーマンスを定格からOCまで、じっくりと探っていこう。

Core i3のポジションをおさらい

これまでOCを目的とするユーザーはCore i7やi5の「K」付きモデルを選んでいたので、これらには詳しくてもCore i3には疎いということもあるかもしれない。また、Core i3-7350KでOCデビューしてみようという人もいるかと思われるので、最初にCore i3の特徴をまとめておこう。まずは以下の表をご覧いただきたい。

グレード Core i3 Core i5 Core i7
物理コア数 2 4 4
Hyper-Threading ×
論理コア数 4 4 8
LLC 3~4MB 6MB 8MB
PCI Expressレーン数 16 16 16
Turbo Boost × 2.0 2.0
QuickSyncVideo
VT-x
VT-d
TSX-NI
AVX 2.0
AES
セュアキー
SGX
MPX

基本的にはコア数とHyper-Threading Technology(HTT)の有無、それによるスレッド同時実行性能、LLC容量、そしてTurbo Boost機能の有無が異なる。それでは順を追って見ていこう。

まずコア数とHTTの対応だが、性能面では実コア数がモノを言い、その上でHTTによる性能アップがある。つまり、同じ4スレッドの同時実行が可能でも、4コアのCore i5と2コアのCore i3では、Core i5のほうがよりマルチスレッド性能が高い。したがってCore i3は、比較的少ないスレッドで済む用途に向いている。

一方、Core i5やi7はゲーミングやグラフィックス、エンコードといった明確な目的がある場合や、将来のスキルアップに備えてハイスペックPCが欲しいといったユーザーが選びたいCPUである。

今回はCore i3-7350Kのエンジニアリングサンプルを入手した

LLCの容量は、キャッシュヒット率に影響する。キャッシュメモリ内にデータがあれば、CPUはそれを参照するが、溢れた場合はさらに下流のメインメモリにアクセスする。CPUダイ内のLLCへのアクセスは高速だが、LLCまでを参照したうえでさらにメインメモリまで参照するとなるとアクセスタイムが大きくなり、処理に時間がかかる。LLCが大容量であれば、データのヒット率も上がる。これが少ないCore i3は、i5やi7よりはメインメモリへのアクセスが増えるわけだ。

最後にTurbo Boost。Turbo Boostは、CPU温度が低い状態において、その余裕のなかで必要に応じて自動的にOCが行われる機能だ。アイドル状態からアプリケーションを立ち上げるようなシーンで、起動時間が短縮されるイメージでよい。実際にはアプリケーション起動後もCPUの状態に応じてブーストされるので、その点もメリットとしては軽視できない。

CPU性能の有効活用という点では、Turbo Boost機能のないCore i3はCore i7やi5と比べて引けを取る部分があると言えるだろう。ただ、Core i3でもSpeedStep機能は利用できるので、アイドル時のクロックは低く、負荷がかかれば定格までの範囲でクロックは変動する。

ちなみに、Core i3/i5/i7では、拡張命令への対応はほぼ同じだ。むしろ「K」付きと「K」ナシでは「vPro」への対応などが異なるので、こちらのほうが重要になることもあるだろう。また、より低コストのPentiumやCeleronでは、一部の拡張命令が利用できないので、AVX 2.0やTSX-NIなどを利用する特定のアプリケーションにおいて、性能が大きく劣ることもある。この意味で、そこそこの性能を求めつつコストを抑えたい用途においては、Core i3がよい選択肢となる。