好調な業績を記録する携帯電話大手だが、うちいくつかの企業では、業績のけん引役となっているのが携帯電話事業ではなく、光回線による固定ブロードバンド通信事業である。しかしなぜなぜ携帯電話事業者が固定通信に力を入れるようになり、それが業績好調へとつながっているのだろうか。

格安スマホ人気で減少する売上を支える"光"

1月から2月にかけて大手携帯3社の決算が相次いで発表されたが、その内容を見ると、米国でも事業展開しているソフトバンクグループは、円高の影響を受けて前年同期比では減収となったものの、いずれも業績自体は伸びており、利益を大きく向上させるなど好調な決算となっていた。

主力の国内通信事業を見ても、3社ともに売上・利益共に高めており、総務省による端末の実質0円販売の事実上禁止措置や、MVNOなど低価格サービスの台頭などを受けてもなお、好調なようだ。だがその詳細を見ていくと、やはりそれらの影響が随所に出てきており、移動体通信事業に大きな影響をもたらしつつある様子を見て取ることができる。

例えばKDDIは、今回の決算からモバイルの契約数に関して、auの契約数に加え、UQコミュニケーションズやジュピターテレコムなど、連結子会社のMVNOの契約数も含めた「モバイルID数」を評価の対象とすることを明らかにしている。しかもその内訳を見ると、auの契約数は前年同期比38万人減の2530万人と減少傾向にある一方、MVNOの契約数は前年同期比29万人増の35万人と大きく伸びており、低価格サービスにユーザーが移っている様子を見て取ることができる。

低価格サービスへの顧客流出を受け、KDDIはauだけでなく、傘下企業のMVNOの契約数も評価対象とするようになった

またソフトバンクグループ傘下のソフトバンクも、ワイモバイルのユーザーが大きく伸びていることから、ARPUが前年同期比150円減の4530円となるなど、売上の基礎となるARPUが減少するに至っている。NTTドコモも1月27日に実施した決算会見で、昨年1月、2月頃からワイモバイルなどへの流出が多くなっていることを明らかにしており、端末価格の高騰などによる低価格サービスへの顧客流出が、各社に深刻な影響を与え始めていることは確かなようだ。

しかしそうした中にあって、キャリアの業績をけん引している事業がある。それは、光回線による固定ブロードバンド事業だ。中でも2015年よりサービスを開始したNTTドコモとソフトバンクは、いずれも光ブロードバンドが業績けん引に一役買っていることが、決算内容からも見て取ることができる。

「ドコモ光」を展開するNTTドコモの場合、今四半期の契約数は前年同期比2.7倍となる297万契約に達し、1月14日には300万契約を突破したとしている。またソフトバンクも、「ソフトバンク光」の累計契約数が前年同期比2.6倍の314万に達したという。ちなみにこの事業に関しては「auひかり」で先行しているKDDIも、今四半期の光ブロードバンド契約数は前年同期比5%増の388万と、小幅ながら伸びていることが分かる。

ソフトバンクの「ソフトバンク光」は累計契約数が前年同期比2.6倍の314万に達するなど、急成長ぶりを見せている