国内のシャープペンシルの販売規模は年々増加しており、製図用を中心とする1000円以上の高価格帯な製品も人気が高まっているという。そんな中、ぺんてるは価格3000円のシャープペンシル「オレンズ ネロ」を市場に投入した。

ぺんてるといえば、1960年に世界初のノック式シャープペンシルを生み出し、その後も芯径0.3mmの製図用シャープペンシルを開発するなど、革新的な製品を世に送り出している企業だ。

技術を結集したフラグシップモデル「オレンズ ネロ」

今回発表した「オレンズ ネロ」は、同社が培った技術を結集した、フラグシップモデルとなる。芯の減り具合に合わせて、ペン先のパイプがスライドする「オレンズシステム」を搭載。パイプで芯を守りながら書くので、極細芯でも折れにくい。また、ペン先を離すたびに芯が出てくる「自動芯出し機構」を、芯径が細い0.2mm・0.3mm用としては世界で初めて搭載した。 搭載。

ぺんてる オレンズ ネロ

自動芯出し機構は、筆記によって芯が磨耗すると、先端のパイプも後退する。その状態で、紙面からペン先を離すと、先端パイプは「先端スプリング」によって、元の長さに戻る。この時、芯も一緒に引き出される仕組みだ。そのため、1ノックで芯が無くなるまで書き続けられる。

ペン先を離すたびに芯が出る「自動芯出し機構」と、芯を保護して折れにくくする「オレンズシステム」により、「ノック1回で芯が無くなるまで、折れずに書き続けられる」を具現化した。

「自動芯出し機構」と「オレンズシステム」により、ノック1回で書き続けられる仕組みを実現

約1万字の「走れメロス」全文をノック1回で書いた原稿用紙

シャープペンシルが3000円になる理由

多くの高機能シャープペンシルが1000円程度で販売されている中、オレンズ ネロの価格は3000円と遙かに高価格だ。その理由はどこにあるのだろうか。

ところで、シャープペンシルのメインユーザーといえば、中高生である。今回の3000円という価格を見る限り、それよりも上の世代が購買層になると推測できる。同社に訪ねたところ、フラグシップモデルとして、ぺんてるが持つ高い技術を形にすることを目指したため、特定の販売ターゲットは定めていないそうだ。あえて言うならば、「時計やカメラなど"道具"に強いこだわりを持つユーザー」と表現していた。

そのため、デザインもラグジュアリーさを追求するのではなく、質実剛健で実用性の高いデザインを採用。ボディーには、樹脂と金属粉を混ぜ合わせた特殊素材を使用し、持った時にずっしりとした重みを感じる低重心にした。コスト増にはなるが、書き心地も追求した結果だ。

デザインは、「グラフ1000」や、「スマッシュ」「ぺんてるメカニカ」など、ぺんてるを代表する高性能シャープペンシルのDNAを受け継いでいる

また、同社の製品のほとんどは、機械生産に頼らずに手作りで作られている。通常のシャープペンシルは10部品なのに比べ、オレンズ ネロは22部品と数が多いため、手間が掛かっている。大量生産は難しく、初回販売店舗は600店ほどに絞っており、各店舗の初回出荷数も数本ずつとなる。

一般的なシャープペンシルの部品数は10点ほど

オレンズ ネロは22部品と、多くの部品で構成されている

無駄を省いてコスト削減に走らず書き心地を追求し、特殊素材、複雑な機構、手間の掛かる製造など、コストを掛けた結果が、3000円のシャープペンシルとなったのだ。

価格の秘密は「所有感」?

オレンズ ネロは、ユーザーの所有感を持たしてくれる「メカニック感」や、芯が折れずにずっと書き続けられるという「安心感」など、機能による付加価値を追求することで、シャープペンシルを高級筆記具へ押し上げようと狙っている。オレンズ ネロの出荷は始まったばかり、そろそろ店頭にも並ぶ頃だろう。国内で高価格帯のシャープペンシル市場が盛り上がる中、機能性を追求した堅実なオレンズ ネロがどの程度認められるのか注目したい。