乗りたいタイミングですぐに乗れたらとても助かる。タクシーの話である。しかしながら、需要と供給はマッチしない。だから乗りたいときに乗れないし、乗ろうと思わなくなる。そんな課題をNTTドコモらが人工知能を活用した「AIタクシー」で解消しようとしている。実験結果を聞くと、なかなかすごいのだ。

人工知能を活用したAIタクシー。NTTドコモ、東京無線協同組合、富士通、富士通テンが実証実験に参加

AIタクシーが変える未来

どこに行けばお客を拾えるか――。ベテランドライバーならまだしも、駆け出しのタクシードライバーには頭の痛い問題だ。だが、AIタクシーなら悩むことはない。タブレットを通じてお客の居所を知らせてくれるからだ。

ドライバーは予測情報を車内設置のタブレットから確認する

AIタクシーでは、タブレット上の地図にはいくつもの数値が表示される。この数値は、該当エリア内における30分後のタクシー需要を示しており、情報は10分ごとに更新される。数値が高いほど需要が高く、客待ちのドライバーは、ゼロのエリアに向かうよりも、数値の多いエリアで営業したほうが効率がいいわけだ。

タブレットに表示される予測情報。タブレット内の数値は500メートル四方における乗車予測を示す

お客にとっても、メリットがある。乗りたいときに近くにタクシーがいる機会が増え、待ち時間の短縮につながったり、電車遅延などイレギュラーな状況へも対応するという。

神がかった技術のカラクリ

神がかったようにも見えるAIタクシー。これを実現しているのは、人工知能(AI)である。過去の乗車場所、時間の履歴といったタクシーの運行データ(10-20分前の直近の乗車データも活用)に、気象データ、イベントデータを活用する。もうひとつ肝になるのが、ドコモの「モバイル空間統計」だ。

モバイル空間統計とは、携帯基地局を活用した人口統計のこと。ドコモは個人を特定しない形で、携帯基地局への接続人数を把握しており、夜の都心部の人口が昼間より減るように、時間、場所に応じて増減する統計情報を利用したのだ。

このモバイル空間統計を人工知能に読み取らせることで、どこに人が集まっているのかがわかり、リアルタイムに近い形でどこに行けばタクシー需要があるかを表示してくれる。電車の遅延が発生したり、比較的マイナーなグループのライブイベントなどが行われても、当該の場所のタクシー需要をリアルタイムで表示してくれるというわけである。