日本マイクロソフトは2月16日、働き方改革支援の一環として、Office 365の「Office Delve」「MyAnalytics」を活用した事例を発表した。

メール送受信件数や会議時間を可視化する「MyAnalytics」

読者諸氏の中には、自分の労働環境に不満を覚えている方も少なくないだろう。業務システムを改善し、周りの人たちと適切にコミュニケーションすることで、業務が最適化されていく。だが、実際は諸般の事情で難しく、我慢する場面も多いはず。そんな働き方は、「Office 365」の一機能である「Office Delve」「MyAnalytics」を使うことで変化すると、日本マイクロソフトは力説する。

Office Delveは自身の行動を常に記録し、OneDrive for BusinessやSharePoint上に保存したドキュメントへ素早くアクセスできる機能。バックグラウンドでは、記録データをもとにユーザーの好みや傾向を分析し、提案や自動共有などが行われる。

日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション本部 本部長 岡部一志氏

一方のMyAnalyticsは、Office Delveの一機能だった「Delve Analytics」を改称したもの。Office 365上のメール送受信件数や会議に参加した時間などを分析して、数値やグラフによる可視化、および改善ポイントを提案する機能だ。

日本マイクロソフトは日本政府が推進する「働き方改革」に賛同し、これまでも多くの活動を行ってきたが、2017年は新たなステップとしてMyAnalyticsによる社内の働き方改革を実施。「AI(人工知能)技術による気付きを活用して、働き方の『質』向上を目指す」(日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション本部 本部長 岡部一志氏)と説明する。

まずは実際の画面をご覧いただきたい。Office 365のポータルサイトからアクセスしたMyAnalyticsのダッシュボードには、Office 365(Exchange Online)で送受信したメール件数や相手がメールを開くまでに要した時間、会議に費やした時間などが示される。

日本マイクロソフトでは、他部門を巻き込んだほうが仕事が推進するというデータがあるため、コミュニケーションとコラボレーションという2つのテーマに絞った可視化を目指したのだろう。これらの情報から、他部門とのコミュニケーション回数を増やそう、上司のメール応答時間が多いので急ぎのメールは翌日送信しよう、会議中に内職(議題と関係ない作業)を行っている時間が多い……といった現状が分かる。自身の働き方を、客観的なデータにもとづいて見直しを図れるのが、MyAnalyticsにおける最大の特徴だ。

「MyAnalytics」の個人用ダッシュボード。会議やメール利用に費やした時間と、改善点として「検討事項」が示される

共同作業を行う相手に対して「上位の共同作業者」や「長期間連絡をしていない連絡先」が表示される

Office 365の予定表から収集したデータを基に会議時間や内職時間などが確認できる

長時間の会議など各カテゴリーから示される「会議の傾向」。ちなみに各データは実際の日本マイクロソフト社員によるデータだ

「送信したメールの15%は開封されない。理由としては、24時間経つと他のメールに埋もれてしまう。だからこそ、対面やSkype会議などツールを使い分ける」(日本マイクロソフト Officeマーケティング本部 冨士野光則氏)。

具体的な効果としては、会議の最適化も挙げられる。やや極端だが、会議に出席して内職が多い人は、その会議に出る必要がないのかもしれない。会議の時間や参加メンバーを見直し、もし出席が不要な人ならば、その時間を創造的な活動につなげたほうがはるかに有用だ。

MyAnalyticsによる具体的な改善例

日本マイクロソフト Officeマーケティング本部 冨士野光則氏

現在の日本マイクロソフトは、「社員はインパクトを残す業務を求められている。3年ほど前から人事評価制度を変更し、他部門や他者とのコラボレーションから生まれるインパクトを軸に評価が行われる」(岡部氏)という。筆者も以前から同様のことを日本マイクロソフトから聞いてきたが、改めて振り返ると、エコシステムの推進や多業種との協業も納得がいく。

また、日本マイクロソフトには、月に数回ほど上司との面談時間を設ける習慣があるそうだ。ここでも、MyAnalyticsなどから得た自身のデータを用いることで、円滑な面談と改善に役立っているという。

さらにKPI(重要業績評価指数)の可視化も実現可能になり、「具体的な数値目標に沿った見直しが可能になる」(日本マイクロソフト Officeマーケティング本部 輪島文氏)とも。その結果、日本マイクロソフトの事業生産性は26%の向上に至ったそうだ。

MyAnalytics運用はKPIの可視化にもつながる

日本マイクロソフト Officeマーケティング本部 輪島文氏

他方で、MyAnalyticsは「管理ツールではない」(岡部氏)とする。

人事部門が労働時間を管理するための道具ではなく、あくまでも自分自身が気付きを得るための道具だと強調した。自身の働き方を振り返ることで得た気付きから、実際のアクションを変更することで、質の向上と新たな働き方改革を目指す。

このソリューションは、Office 365 Enterprise E5契約者(一部のOffice 365契約者はMyAnalyticsアドオン購入で利用可能)のみだ。例えば筆者がGmailを利用し、日本マイクロソフトの関係者とやり取りした場合、筆者のデータがMyAnalyticsに反映されることはない。

MyAnalyticsとOffice Delveの役割と方向性

「すべてをOffice 365化」すれば魅力的なソリューションだが、恩恵にあずかる方々は少ないかもしれない。ここでMyAnalyticsとOffice Delveを紹介した理由は、日本政府が取り組む働き方改革である。政府が重要課題と位置付け、我々の労働環境に大きく影響し、日常生活を変える可能性が高い。読者諸氏にも、今あるIT技術で何が変わり、自身のライフスタイルを変える余地があるのかを一考して欲しいのだ。日本マイクロソフトによれば、可視化による最適化は今後も拡大し、2017年の夏ごろには、売り上げ向上など企業ごとに異なる経営課題について分析&可視化を行う「Workplace Analytics」に進化させるとしている。