使い勝手を細かく改善したATOK 2017

さて、ここからは新機能を紹介しよう。犬種の「サモエド」や外国人名の「ベイカー」など、変換や推測変換辞書の語彙拡充を図ったATOK 2017だが、注目すべきは「インプットアシスト」機能である。

英字で入力した文字列を変換中の状態にする機能は、ATOK 2014で実装しているため、目新しいものではない。ある程度キータイプが速くなると、打ち直したほうが確実なため、筆者も同機能を使う場面は少なかった。だが、ジャストシステムは「キータイプ直後の操作」に着目し、キーアサインを「再変換」と同じ[Shift]+[変換]キーに変更し、普段から機能差を意識せずに使ってもらうことを目指しているそうだ。

なお、約0.5秒で現れるガイダンスは、プロパティダイアログの<入力・変換タブ>に並ぶ、<入力補助/特殊>の<日本語入力オンへの切替を通知する>のチェックを外せば非表示にできる。

ATOKをオフにした状態で文章を入力してしまうことは、誰でも経験があるだろう。この状態で[Shift]+[変換]キーを押すと……

自動的に確定した文字列を取得して再変換を実行する。また、メールアドレスなどをATOKがオンの状態で入力した場合も、同じ操作で英数字に切り替えることが可能だ

入力関連では、[半角/全角]キーを2回押すことで、半角・英字入力・固定モードの切り替えを解除し、ATOK 2017の通常状態に戻す機能が加わった。これは個人的理由で歓迎したい新機能だ。例えば、記者会見中に登壇者の発言をリアルタイムで入力すとき、キーを打ち間違えて入力モードが変わってしまうことがある。[無変換]キーを押せば解除できることは分かっているのだが、登壇者の声が頭の中にあふれている状態では対応が難しい。

上記が反映されるのは半角・英字入力・固定モードに限られ、[カタカナ/ひがらな]キーを押した場合は対象外だ。以前のバージョンから、かなロック有効時は通知ウィンドウを表示し、かな入力を併用するユーザーに配慮したものと思うが、個人的には残念である。

かな入力に切り替えるとデスクトップ右下に現れるウィンドウ。マルチディスプレイ環境では別ディスプレイに表示されてしまうなどの問題は改善されていない

モード固定の解除も、<入力補助/特殊>の<日本語入力オンで変更したモードを元に戻す>で機能の有無を切り替える。前述したように、「特殊」の項目はATOK 2017で増えている。

中でも気になるのが、<「漢字/半角モード切替」で日本語入力オンにする>だ。ジャストシステムは[半角/全角]キーでATOKのオン/オフを切り替えるは、ホームポジションから指を離すため煩雑だという利用者の声に応えるため、ATOKは[変換]キーで半角モードに切り替わるようになっている。ただ、英語版のPCゲームなど、日本語環境を考慮していないアプリケーションを利用する場合、ATOKを有効にしていると正しく動作しないことが多い。あくまで、「日本語ととも英数字を入力する」シーンでは有効だが、万能ではないことに注意すべきだろう。

また、正しく文字入力できないというトラブルは、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)上で経験したことがある方も少なくないはず。筆者も一部のUWP製チャットツールを使う場合、テキストエディタにATOK 2016で文字を入力し、コピー&ペーストで返信していた。ジャストシステムによれば、ATOK 2016まではアプリケーションの使用に集中するため、プロパティダイアログの起動や文字パレットの呼び出しを抑止していたとのこと。

ATOK 2017はこの点を見直し、デスクトップアプリと同様の動作を可能にしている。具体的には、プロパティダイアログや文字パレット、辞書ユーティリティの呼び出しや単語登録の実行が可能になるが、デスクトップアプリと違って「入力モード」が現れないため、操作性が改善したとは言いがたい。それでも、UWPへの移行が著しいWindows 10と組み合わせることを踏まえると、ATOKツールをUWPに対応させるのは良い判断だ。

ATOK 2017では、UWPアプリケーションでもプロパティダイアログの呼び出しなどが行える。ただし、UWPアプリケーションによって動作は異なり、「Windowsストア」の場合、現在の状態を示すアイコンを確認できた