「アクティブ・ラーニング」って何? どんな能力を身に付けることができるの?

今年3月に告示され、2020年度以降に実施される小中高校の次期学習指導要領。その中では、「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)の視点が全教科を通じて導入される見込みとなっている。

そもそも「アクティブ・ラーニング」とは何なのか。そしてその学習の結果、子どもたちはどのような能力を身に付けることができるのだろうか。

今回は、東京大学名誉教授・白梅学園大学学長で、教育学や育児学を専門とする汐見稔幸氏の解説(ボーネルンドセミナー「幼児教育や子どものあそび環境に見る アクティブ・ラーニング成功のカギ」より)をお伝えする。

2030年、答えがない時代を生き抜く力を身に付ける

文部科学省の中央教育審議会(以下、中教審)が議論を重ねている次期学習指導要領。汐見氏によれば、その内容を読み解くと「2030年の社会を担えるような人材を育てる」ということが、キーワードになっているという。

「2030年は、答えが決まっていない問題があふれてくる社会になる。企業のトップや政治家がアドバイスすれば、安全に動いていく社会ではなく、国民全てに『こうした方がいい』と企画・提案する力が求められる」と汐見氏。人工知能やロボットが広がる中で、暗記学習が力を発揮する時代ではなくなり、柔軟な思考によって、"無いもの"を提案できる学力を育てなければならないという考えが、次期学習指導要領の根本にあるようだ。

東京大学名誉教授・白梅学園大学学長で、教育学や育児学を専門とする汐見稔幸氏

「主体的、対話的で深い学び」が必要に

具体的には、どのような資質・能力が求められるのだろうか。汐見氏によれば、中教審では、(1)生きて働く「知識・技能」、(2)未知の状況に対応できる「思考力・判断力・表現力」、(3)学びを人生や社会にいかそうとする「学びに向かう力、人間性」を「3つの柱」として挙げているという。

「ただ頭に入れるのではなく、実際の場面で身に付けた知識・技能、答えが決まっていない問題だらけの中で、自分の意見を根拠を持って言えるようになること、学びを家庭生活などで生かそうとする力が求められている」とのことだ。

そして、そんな力を育む方法として用いられるのが「アクティブ・ラーニング」。「主体的、対話的で深い学び」と定義されていて、「自分で自分のやりたいことを選び、自分の意見を他者と戦わせたり、本などで先人の考えを学んだりして、心が深く動き、工夫や失敗を重ねてやっとできるようになる、という過程を経た学び」と汐見氏は解説した。

アクティブ・ラーニングは「遊び」から

汐見氏によれば、アクティブ・ラーニングは、「遊び」と深くつながっているという。「乳幼児は、遊びを通してひとつの物を学び、『もっとこれができるようになりたい』という気持ちを育む」とのこと。遊びを通して、集中力や失敗してもめげない力、我慢ができること、自分への自信、コミュニケーション能力などを、育むことができるそうだ。

「保育者は、子どもが興味を持ったことに対して、あたたかく応援のメッセージを送るということが、非常に大事。人間は誰かから教えられるよりも、自分で『面白い』と思ってチャレンジしたときの方が、得るものが大きい」と汐見氏。このような視点を持って子どもに向き合うことから、アクティブ・ラーニングの基礎は築かれるのかもしれない。

※イラストはイメージで本文とは関係ありません