大塚家具は2月10日、同社旗艦店である「IDC OTSUKA 有明本社ショールーム」(東京都江東区)をリニューアルオープンし、同店に隣接する形で新業態店「アウトレット&リユース プレミアム 有明」を同時オープンする。さらに、伊勢谷友介氏が代表を務めるリバースプロジェクトとのコラボレーションシリーズ「Un-TIEQUE NEWTIQUE(アン・ティーク ニューティーク)」の展開も開始。同時に3つの取り組みを仕掛ける大塚家具の狙いとは何なのだろうか。

リバースプロジェクトとのコラボレーションも実施した大塚家具。どんな未来を見ている?

「モノの提案」から「住まい方の提案」へ

1つ目の取り組みは、3階~5階の3フロア構成となっている本社ショールームのリニューアルだ。今回のリニューアルで同社は、提案型売り場の強化とゾーニングの大幅変更を実施。「モノを提案する場」から「住まい方を提案する場」への変革を目指す。

「収納」「眠り」「あかり」などの専門店で構成される3階では、インテリアの相談・提案スペースである「住まいるステーション」を全面リニューアル。4階では従来の「スタイル別」構成を見直し、「壁面収納」「国産家具」「ワークチェア」など顧客のニーズが高い切り口のゾーンを加えて再構成した。"特選品フロア"として展開する5階では、演出性を高めるアート作品を約450点投入。売り場自体も、ブランド別のライフスタイル提案ギャラリーとして再編集を行った。

本社ショールームの売り場を再構成した

新概念の"リユース品"は名称も公募

2つ目の取り組みは、本社ショールームの5階に隣接する形でオープンする新業態店「アウトレット&リユース プレミアム 有明」である。大塚家具は2016年9月からリユース事業を本格的に始動しており、これまでも大阪南港、横浜鶴見に「アウトレット&リユース」業態の店舗を展開していた。今回オープンする「プレミアム 有明」は、既存2店舗よりも国内外のハイブランド家具を充実させ、付加価値の高い商品を求める顧客に対応する狙いがある。

扱うアウトレット品は、通常店舗で扱うブランド家具のモデルチェンジ品や、店頭展示品、モデルルーム貸出品、アウトレット限定品など。大塚家具販売価格よりもさらに15~60%オフの価格帯で提供する。

アウトレット品の一例。「bross」の伸長式テーブルと布張りチェア4脚のセット(36万円/通常価格60万6,960円)

リユース品では、通常店舗では取り扱いのないブランドの家具も展開。大塚家具は、自社のリユース事業を従来型のリユースと明確に区別しており、職人によるクリーニングと補修で「上質な家具の元来の価値を取り戻したうえで、新たなオーナーに適正価格で提供」するとしている。こうしたスタイルのリユース家具を「家具選びの新しい選択肢」とし、その名称を公募することも発表された。

リユース品の一例。英国王室にも愛される「DURESTA」の布張りラブソファ(49万8,000円)

大塚家具が提案する新たな"リユース家具"。ぴったりの名称を公募する(画像は同社公式WEBサイトより)

また、同店では後述の「Un-TIEQUE NEWTIQUE」シリーズのアイテム20点以上の販売も開始。全部で、家具・照明・敷物・寝装品など約800点を扱う。

使い古した家具に現代のアイディアを

3つ目の取り組みは、俳優や映画監督としても活躍する伊勢谷友介氏が代表を務めるリバースプロジェクトとのコラボレーションブランド「Un-TIEQUE NEWTIQUE」のアイテムの販売だ。

リバースプロジェクトとのアライアンスも、大塚家具がリユース事業を本格化させた2016年9月に発足した。顧客から下取り・買い取りした家具に、リバースプロジェクトのクリエイターが独自のアイディアと技術で付加価値を与え、新たな家具として生まれ変わらせる取り組みである。

「アウトレット&リユース プレミアム 有明」では、オープンに合わせてこれらの商品群20点以上の販売を開始する。再塗装を施しワントーンの色調に統一することで古い家具を使いやすく生まれ変わらせた「Clad」シリーズや、エドウィン社のイレギュラー品となったデニム生地をパッチワークして張地にしたチェア「Patching」シリーズ、きりだんすに金属フレームを組み合わせて現代のライフスタイルに合うアイテムに仕上げた「Rods」シリーズなど、年を経ても良質な家具とクリエイター1人ひとりのアイディアが生きた仕上がりだ。

色を統一して元の家具の形の良さを生かした「Clad」シリーズ。手前のチェアが3万8,000円、奥のビューローが8万8,000円

手前が「Patching」シリーズのチェア(5万8,000円)。ほか、いろいろな形のものを用意している

古いきりだんす。「Rods」シリーズのリメイク元だ

きりだんすをリメイクした「Rods」シリーズ。一番大きなアイテムが18万円、中くらいのものが13万8,000円、最も小さいものが12万8,000円

伊勢谷友介氏と未来を語る

このほど都内で行われた記者発表会では、大塚家具代表取締役社長の大塚久美子氏と、リバースプロジェクト代表の伊勢谷友介氏も登場して対談を行った。

大塚久美子氏と伊勢谷友介氏が対談

伊勢谷氏は大塚家具について「以前社長と対談したときもお話させていただきましたが、家具を大事にしていく文化を作ることは、社会としての責任でもありますし、1人の大人としての責任でもあると僕は思っています。その中で大塚家具は、たくさんの家具を作って販売している一方で、今は買い取りもしている。普通は捨てられたり二束三文で売られたりしてしまうものを、家具屋さんとしてまた大事にし直すってことが、僕も外から見ていて『すごいな』と思っていたんですよ」とコメント。

大塚家具のリユース事業を「『すごいな』と思っていた」と伊勢谷氏

大塚氏も、「日本には、"大事にしたモノに魂が宿る"という考え方があります。たくさんの時間を経て使う人の思いが宿った家具をゴミにするより、次の人に渡していくということに価値があるのかなぁと思っています」とそれに応えた。

続いて伊勢谷氏から「これからはどんな家具デザインがあるといいですか?」と問われると、「今の生活に合う、今の人たちに『かっこいい』と思ってもらえるものです。昔の生活で使われていた古いフォーマットの家具が、クリエイターの手によって新鮮なフォーマットに生まれ変わる。そんな『Un-TIEQUE NEWTIQUE』のデザインはいいなぁと思いますね」と回答。「質はいいのに使いようのない家具は、まだ日本中の部屋にたくさん眠っていると思います。そんな家具も、こうした形でリメイクすればすごくオシャレに生まれ変わりますよね」とリユースへの思いを語った。

良質な家具が、使い手やデザインを変えながらいつまでも使われ続ける社会。大塚家具が見据えているのはそんな未来なのかもしれない。

※価格は全て税込