独フォルクスワーゲン「ゴルフ」の電気自動車(EV)が、2017年中にも国内で発売される予定となった。「e-Golf(イー・ゴルフ)」と名付けられるEVのゴルフは、2015年の半ばに日本国内で導入される予定だった。ところが、国内で展開されるチャデモ(CHAdeMO)方式の急速充電器のうち、機種によっては充電できないことが判明したことから、販売が延期されていたのである。いよいよ発売となるe-Golfは、EV普及の追い風となるのだろうか。

2017年1月、コンパクトSUV「ティグアン」の発表会に登壇したフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長のティル・シェア氏は、「e-Golf」の投入を含む日本市場での商品戦略を発表した

販売延期の背景は

e-Golfが販売延期となった2年前も、充電プラグの差込口の形状や、充電の仕組み自体には問題なかった。では、なぜ延期しなくてはならなかったか。それは、高電圧の電流を流す急速充電で重要となる、安全確保の仕組みで適合性に課題があったからだ。

急速充電を行う際にはまず、車両側バッテリーの充電残量がどれほどであるかなど、急速充電器と車両とで通信し、状況を確認したあとで充電が始まる仕組みとなっている。その相互通信の仕方については急速充電器の機種によって違いがあるのだが、その適合が十分でなかったため、機種によってe-Golfは充電できないことが判明したのだった。

この点は、国内の自動車メーカーである三菱自動車や日産自動車は承知しており、また、独BMWは「i3」の導入前に「ミニ」を改造し、実証実験車で日本国内を走り回って充電の可否を調査していたので、i3市販の段階で通信の問題は解決していた。

フォルクスワーゲンと同様のことは、アダプターを取り付けることでCHAdeMO対応する米テスラでも起きたが、テスラは急速充電を含めて専用の充電器で充電するのが基本であり、また1回の充電で走行できる距離も長いため、販売を続けながらCHAdeMOの通信問題への対応を進めていった。フォルクスワーゲンは、販売延期で一度仕切り直し、万全を期して準備を整えてきたというわけである。