社内規則に関しても、大きな改革があった。1つは、出張における交通費と宿泊費の実費精算の採用だ。

「以前は職位ごとに1日いくらという設定がありました。しかし特別安いところを選ぶようなことをしなくても、地方によっては宿泊費が安く済んでしまうこともあります。職位が高い人間は出張ごとに小遣いができてしまうのです。細かいことですが、クレジットカードも一旦個人のもので処理して精算すると、ポイントが自分につきます。こういった出張が多い人間とそれ以外の間にある不公平をなくそうということで、実費精算にしました」(小和瀬氏)

さらに同社は、勘定科目の整理や承認フローの見直しも行った。

「まず旅費に関する勘定項目が70ほどあったものを10個以下に削減しました。細かく分けているものの、現実には使っていないというものをなくした上で、さらに利用の多いものをリストの上位にして選びやすくしています。また、承認も最大6段階ありましたが、すべて1段階、直属の上長のみとしました。承認作業はスマートフォンからでも行えるようにし、承認者が不在なため、精算が滞るということをなくしました」と小和瀬氏は語る。

承認を1段階にしたのは、Concurの基本機能では1段階の承認しか行えないことが発端だ。もちろんカスタマイズは可能だが、LIXILではあえて業務にシステムを合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるようにした。

「Concurを選択したのは、米国でスタンダードとなっていたからです。グローバル契約にしたいという思いもありました。そんな海外でスタンダードなConcurが1段階でいいとしているわけですから、世界標準に合わせることにしました。クラウド化にあたって、できるだけシステムに合わせようと決めました」と小和瀬氏は語った。

導入効果は3億円!業務改革を伴うシステム導入の価値

LIXILは200社近くの関連会社を持ち、全国に800もの拠点が存在する。全体で1年間に処理する精算書類は、約20万枚にも及ぶという。今回新システムを導入したのは効果が見込める63社にとどまるが、それでも利用者数は24,000名と膨大だ。Concurのアジアユーザーとしても最大規模になるという。

ユーザー数が多いだけに、導入効果も大きい。導入した関連会社において入力レスとなった自動化率は約93%と高く、管理工数削減などによる効果は約3億円と見込んでいるという。

「業務改革を行ったので難しい部分もありましたが、全社導入に先駆けたテストケースとして情報システム部で2カ月間、従来方式との二重処理を行いました。そこでの作業時間記録を規模に合わせて計算したのが3億円という効果です。2カ月間やってみて、現場も経理もこれならやれそうだという手応えをつかみました」と小和瀬氏。

新システムへの切り替えにあたっては、経理部門が社内のナレッジマネジメントの仕組みを利用してConcurの利用方法のノウハウ集を作るなど、現場への周知を行った。

「システム導入が目的ではなく、業務効果のあるシステムを作ることが目的です。新システムで現場が大変になるのでは意味がありません。そのためには業務改革が必要です。業務改革は大変だといいますが、旅費精算業務が改革ができないようでは、メイン業務の改革はできないと考えています」と小和瀬氏は力強く語るが、それでも現状の電子帳簿保存法を見た範囲では、すぐに対応とはいかないようだ。