住宅ローンは年収の5倍もの借金を負うことで、考えてみれば大変なことです。「資産が残る」「家賃負担がない」「団体信用生命保険」等の制度があるなど、額だけが問題ではありませんが、どのような借り入れをするのかは、これからの人生設計次第で、借り入れる前にじっくり今後の生活設計を考えてみましょう。

いろいろな借り入れ方

固定金利か変動金利か……「低金利時代は固定金利、高金利の時は変動金利」を選択するのが基本的な考え方です。現状を見ればこんなに低金利の状況はありませんので、固定金利がおすすめです。この状況でさらに低い変動金利でなければ返済できないのであれば、その計画自体に問題があると言えます。経済が活性化するための住宅ローンの適正金利は6%と言われています。高度成長期の住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)の固定金利は5.5%でした。20年、30年先の社会状況や自分たちの状況は、そうそう予測がつくものではありませんので、固定金利の方が安心です。

元利均等か元金均等か……通常は毎月の返済額が一定の元利均等返済です。それに対して、元金均等返済とは、3,000万円を30年返済で借り入れた場合、まず元本分として3,000万円÷30年で年間100万円を返済するものです。それに加えて残債に対する利子を合わせて返済していきます。当然残債は年々減りますので、それに対する利子の額も次第に減少していき、当初の返済額は多いですが、月々の返済額は次第に少なくなっていきます。早めに多くを返済する分、総返済額は元利均等返済より少なくなります。ただし扱っている銀行は少ないので注意が必要です。

ローン関連の諸費用……利率のほかに下記の諸費用の有無と実際の金額、利率に組み込まれているのか別立で徴収されるのかのチェックが必要です。一見、利率が高くても、いろいろな費用が含まれている場合もあります。

融資手数料→一律か融資金額に対するパーセントか
団体信用生命保険料→金利組み込みか別立てか
保証料→有無と金額
繰り上げ返済手数料→有無と一回の金額・その他条件

タイプ別の返済パターン

住宅ローンの返済方法は、年齢や収入等によって異なります。下記の表は以前のコラムにも掲載しましたが、考え方の一例を示したものです。ただし現在は低金利なのでどのタイプも、短期に繰り上げ返済で完済する予定でない限り、固定金利の選択がベストだと思います。

タイプ別返済パターン

「未収利息」って知っていますか?

変動金利は一般的に半年に1回、返済額の見直しは5年に1回とされ、多くは見直し後の返済額はそれ以前の1.25倍以内と規定されています。住宅ローンの場合に使われる「未収利息」とは、もし変動金利の金利が返済額1.25倍以上に上昇した場合、本来返さなくてはならない月々の返済額と1.25倍になった返済額の差額のことを言います。例えば……

この差額はどうなるのでしょうか。「返済がその分免除される?」と思っていませんか? 銀行がそんなおまけをしてくれるわけがありません。以前は、返済が完了したときに、今までの差額を未収利息として一括請求されました。「すべて完済したと思ったら新たな返済を求められてびっくり」という事態が実際にあったのです。現在は、差額分は元本にもどされ、その分元本が増えて、それにさらに利子が計算される仕組みとなっていることが多いと思います。利息に利息が付くわけです。上記の事例でいえば、毎月2万円、新たな借金が増えることになります。ボーナス返済も本来月々返済してもらう分を6カ月まとめているので、銀行からすると待っている間は未収利息のようです。

上記事例はわかりやすくするために極端にしてありますが、現在はまれにみる低金利時代です。いったん上昇すれば金利1%は簡単に2%や3%になるでしょう。

日々の管理が大切

人生何があるかわかりません。私は多少長めに借入期間を設定し、60歳までに繰り上げ返済をして完済することをお勧めしています。以前は退職金で完済するケースが多くみられましたが、これからの時代退職金があったとしても老後の大切な生活資金です。繰り上げ返済資金は、長めに借入期間で月々の返済額が少なくなった分などを別建てで貯蓄し、プールしてください。大切なことは、余剰資金の割り振りです。繰り上げ返済に多くの資金を割り当てて、いざというときに現金がないようでは問題です。

「預貯金」と「繰り上げ返済資金」と「投資」のバランスが大切

また、変動金利で借り入れた場合、金利上昇の機運の前に固定金利に変えたいものですが、それを察知する能力も日々のチェックも必要です。また返済方法の申請をして審査を受けている間に金利は上昇してしまう可能性もあります。上昇したら間髪入れずに固定金利に修正できるものではないのです。

住宅ローンは大きな借金には違いありませんが、将来を見据えて上手に借り入れすれば、住まいは大きな資産として残るのです。無理のない、自分たちのライフスタイルに適した住宅ローンを考えてみましょう。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

※イラストは本文とは関係ありません