日本学生支援機構 奨学事業戦略部奨学事業戦略課戦略監の前畑良幸氏

日本政策金融公庫が主催、日本学生支援機構と日本FP協会が共催し、1月22日に公的な奨学金と教育ローンを解説するセミナーが行われた。日本学生支援機構による奨学金制度と、国の教育ローンはどちらも公的な制度ではあるが、借りる人や条件、時期に違いがある。それぞれの特徴と違いを紹介したい。

子供が借りて返すのが奨学金

同セミナーでの奨学金制度の説明には、日本学生支援機構 奨学事業戦略部奨学事業戦略課戦略監の前畑良幸氏が登壇した。

日本学生支援機構の奨学金は、非営利の貸与制であることが特徴だ。貸与の対象は、「経済的理由により、修学に困難がある優れた学生・生徒本人」である。

奨学金には、第一種奨学金、第二種奨学金、入学時特別増額貸与奨学金の3種類がある。第一種は無利息、第二種の場合は利息があり、平成28年3月貸与終了者の利率は0.16%だった。それぞれに学力と家計に関する貸与基準が設定されている。入学時特別増額貸与奨学金は、第一種または第二種の貸与を受けており、日本政策金融公庫による「国の教育ローン」を利用できなかった人が対象だ。第二種奨学金プラス0.2%の利息があり、貸与額は10万円~50万円の5種類から、状況に応じて選択できる。

当日配布資料より引用。日本学生支援機構の奨学金は3種類ある

手続きの流れは、予約採用と在学採用で異なる。予約採用の場合は高等学校等で5月中旬と10月中旬(第二種のみ)に募集が行われるため、そこで申請をする。進学後に「進学届」を提出し、採用が決定すると振り込みが開始されるという流れだ。一方、在学採用では、大学等での説明会があり、その後書類等を提出して審査が行われる。4月に申し込んだ場合でも、振り込みは早くて7月となるため、前畑氏によれば「入学後に早く奨学金が欲しければ、高校3年生で手続きをした方が良い」とのことだ。

返還は卒業後7カ月目から開始し、期間は最長20年だ。返還が困難な場合には、月々の割賦金額を半分にする「減額返還制度」や、傷病や災害などの事情がある場合に返還を一定期間停止する「返還期限猶予制度」もある。

入学金にも対応できる教育ローン

日本政策金融公庫 東京教育ローンセンター所長の河内繁氏

国の教育ローンの説明は、日本政策金融公庫 東京教育ローンセンター所長の河内繁氏により行われた。

国の教育ローンは、「進学に関する家庭の経済的負担の軽減と教育の機会均等を図るため」の制度で、「入学前の資金需要(入学金等)」と「入学後のまとまった資金需要(後期授業料等)」に対応していることが特徴だ。固定金利、長期返済となっており、奨学金との併用も可能。河内氏は「多くの方が日本学生支援機構と併用しており、入学時は国の教育ローン、入学後は奨学金を利用していると伺っています」という。

基本的には保護者が借り主になる制度で、子供の数に応じて世帯年収に上限がある。融資額の上限は子供1人につき350万円以内で、海外留学資金は最大450万円以内。融資の使い道は幅広く、学校納付金に限らず、受験費用や教科書代、入在学のための住居費用などに使うこともできる。

当日配布資料より引用。融資額や返済期間が変更となる要件もある

手続きは申し込み後に審査を経て結果が連絡される。申し込みから審査結果の連絡まで約10日、融資まで約10日と最低でも20日間はかかるが、特にこの時期は窓口の混雑や審査に時間を要する場合もあるため、「必要時期の2~3カ月前が申し込みの目安」ということだ。

返済期間は15年以内で、2017年1月22日時点での金利は年1.81%となっている。融資額や返済期間、金利については特定の要件を満たす場合には緩和されることもある。

必要な状況に合わせた検討を

最後に、日本学生支援機構の奨学金制度と日本政策金融公庫の国の教育ローンの違いを整理したい。大きな違いのひとつは、「誰が借りて返すのか」である。子供自らが借りるのが奨学金制度で、保護者が借りるのが教育ローンとなる。子供が借りる場合は卒業後に返還する際の影響、親が借りる場合は老後資金など、将来の家計への影響を考える必要がありそうだ。

また、貸与時期も異なる。奨学金制度の場合は予約採用でも奨学金を受け取れるのが4月以降となるため、受験費用や入学金には間に合わない。それらを必要とするのなら、国の教育ローンを利用することとなるだろう。国の教育ローンの場合は用途が幅広いため、大学入学に伴う住居費などが必要な場合にも、該当する。

日本学生支援機構では納付型の奨学金制度も新設される予定だが、基本的にはどちらの制度も返済が必要ということに変わりはない。大学入学から在学中、そして卒業後の本人と家計の計画を踏まえて、親子で話し合うことが必要だろう。