アドビ システムズは1月27日、東京のホテルにおいて、2017年度の事業戦略説明会を開催。代表取締役社長 佐分利ユージン氏が、同社が提供するCreative Cloud、Marketing Cloud、Document Cloudの3つのクラウドを中心に戦略を説明した。

アドビ システムズ 代表取締役社長 佐分利ユージン氏

同氏は冒頭、「今年は、さらにデジタルによるイノベーションが加速していく。今後はAIの進化がイノベーションを牽引していくだろう。デジタル変革には、大きなポテンシャルがあり、これに対してアドビのDNAであるデザインやデータを融合させれば、企業の差別化要因になる」と述べ、同社の強みである。デザインやデータを融合させて、デジタルトランスフォーメーションを実現していく意向を示した。

また、最近の市場の変化について、「デジタルネイティブの人が増えており、こういった人々は購買パターンが違う。アクセンチュアの調査によれば、2020年には世界のミレニアム世代の60%をアジアが占めるといわれており、この人たちが購買の主役になり世界を動かす。われわれはこういった変化に対応していかなければ、時代に取り残されてしまう」と、今後は、1980年から2000年くらいに生まれたミレニアム世代を強く意識していく必要性を訴えた。

そして同氏は、同社が提供する3つのクラウドについて説明した。

Marketing Cloudはコンサルティングサービスを強化

Adobe Marketing Cloudについては、「このソリューションによる収益は、ワールドワイドで1800億円で、対前年比で20%伸びている。また、具体的な金額はいえないが、日本はこれ以上伸びている。IDCは、デジタルマーケティング市場は2012-2016年に倍増し、その市場規模は9兆円と予測している。われわれの売上を考えれば、伸び代はまだまだある」と、今後のデジタルマーケティング市場における同社のビジネスチャンスが大きいことを説明した。

Adobe Marketing Cloudの収益

続いて「私が社長に就任して2年半が経つが、2年半前と比べ大きく異なっているのは、デジタルトランスフォーメンションを経営者が語るようになってきたことだ。また、どうやって始めるのかを悩んでいる。これを支援するために、コンサルティングサービスに力を入れており、昨年から大きく伸びている。企業買収も進めており、提供できるテクノロジーも拡大している」と、引き続きこの分野に投資を行っていく考えを示した。

コンサルティングは150名体制でサービスを提供

Document Cloudはタグ付きPDFやAdobe Signに注力

Adobe Creative Cloudついては、「クリエイターやデザイナーの人口は増えているわけではないので、多様化に対応できるように投資を行っている。また、クリエイティブワークというのは、モバイル端末の進化により、机以外で作業するケースも増えており、モバイル、クラウドとの連携などにより、クリエイターのワークスタイル変革をサポートしていく」と述べた。

Adobe Document Cloudについては、「AcrobatやAdobe Signを提供しているが、今後もモバイルのトレンドを捉え、場所やデバイスに左右されないドキュメント共有やワークフローの効率化を行っていく。日本はワークフローの効率化で遅れているといわれているが、アドビがサポートすることで、大幅に生産性を向上できる」と自信を見せた。

また、オープンデータ化にも注力するとし、「日本政府は自治体などのオープンデータ化を推進しており、電子行政オープンデータ実務者会議の中で、アドビのタグ付きPDFを取り上げている。PDFにはいろいろな種類があり、タグ付きPDFは、タグによって検索が可能になり、ユーザーの利便性が高まる。今後も政府機関との取り組みを深めて支援していきたい」と語った。

そして最後に「2017年も大きな成長を目指しているが、そのために、売上げの7割を占めるパートナーとの協業を強めていく。日本のビジネスが5年後、10年度に向け持続的に成長していくためには、2017年は分岐点になる。この曲がり角を間違えないように、企業にデジタルトランスフォーメーションのためのデジタルエクスペリエンスを提供できる企業になるためまい進していきたい」と決意を述べた。