1月初旬に米ラスベガスで開催された「CES 2017」では、各社からテレビ新製品がお目見え。中でも「有機ELテレビ」は、今年のエレクトロニクス全体のトレンドとして脚光を浴びそうだ。CES 2017の直後には、東芝も初の有機ELテレビ「REGZA X910シリーズ」を国内発表している。本稿では、有機ELというディスプレイデバイスの特徴を押さえていこう。

■有機ELテレビを知る【後編】 - 各社製品のポイントをまとめてみた

最速で国内発売をアナウンスした東芝「REGZA X910」。発売は3月上旬

有機ELそのものは特別に珍しいものではなく、現在発売されているスマホやスマートウオッチ、デジタルカメラのEVF(電子ビューファインダー)など広く使われている。これがいま、家庭のリビングに置くような大画面になって各社からリリースされることが、大きなトピックになっているのだ。

実を言うと、大画面有機ELテレビの発売は初めてのことではなく、LGエレクトロニクスが2015年から日本市場で販売をスタートしている。そして今回のタイミングで国内メーカーも加わってくれば、有機ELテレビの認知もますます高まっていくに違いない。

有機ELテレビには、有機化合物を用いた素子をガラスなどの基板に蒸着させて、これに電圧をかけて発光させる仕組みの自発光型ディスプレイが採用されている。なお、かつて画質にこだわるマニア層に人気の高かった「プラズマテレビ」も、発光原理は有機ELと異なるが、同じ自発光型のディスプレイの代表格だ。

メリットは、キラッと輝くような明るい光や、(素子を発光させないことで)より深い黒色が再現できることだ。具体的には、映画などを部屋を暗くしてじっくりと鑑賞するのに向くと言われている。また、視野角が広くバックライトを必要としないことから、ディスプレイを薄く製造できる。結果、設置性に富んだテレビが生まれやすいことも特徴だ。

対する液晶テレビは、液晶パネルやカラーフィルターの後ろに光源となるバックライトを配置して、パネルの駆動とバックライトの明滅で映像を表示する。かつて液晶テレビは、パネルやバックライトの駆動コントロールの技術があまり成熟していなかったため、自発光型のディスプレイよりも黒が締まらないし、映像の精彩感も不足しがちと指摘されてきた。

一方で、液晶はコストパフォーマンスの点で圧倒的な優位性を持っており、家庭に薄型大画面テレビを普及させる立役者になった。今では液晶まわりの技術が大きく進化して、特に画面の明るさやピーク輝度の表現力については有機ELを凌ぐほどに成熟した。また、家庭用のテレビとして考えた場合、液晶のほうはサイズや価格のバリエーションが豊富であることが大きな強みになる。

有機ELテレビと液晶テレビ、結局どちら良いのか? という声が聞こえてきそうだが、両者はパネルの性能や技術の優劣で語るべきではない。結論から言えば映像の「味わい」を見比べながら、どちらがより自分の好みに合っているのか、自分が欲しいと思えるテレビなのかを吟味するのが正解だと思う。

2017年は4Kに加えて、HDR(ハイダイナミックレンジ)と呼ばれる、明るさ情報の幅を拡大する高画質技術の台頭が期待されている。各社が今年発売予定の有機ELテレビは、そろって4K/HDR対応を実現。HDRのコンテンツは、NetflixやひかりTV、スカパー! らが積極的に対応を拡大しているし、パッケージもハリウッド発の大作映画がUltra HD Blu-rayになって続々と登場するはずだ。これから4K/HDR時代が本格到来を迎えるときに、テレビの選択肢に有機ELが加わったことは、歓迎すべきだろう。