iWorkを使おう その5 表計算ソフトNumbersをもっと便利に使う

Numbersは報告書を作るのに最適なソフトであることは前回解説した。今回はもう少し掘り下げてみよう。

Touch Barへの対応

まずは新しいMacBook Proで採用されたTouch Barにどれだけ対応しているかを見てみよう。表そのものを選択すると、表のフォーマットに関するボタンが表示される。「ヘッダをフリーズ」で表のヘッダ行、列が表と一緒に移動するようになる。行列の増減もTouch Barから可能だ。

表を選択した場合のTouch Bar表示

「ヘッダ列をフリーズ」させると横スクロールした部分がヘッダに格納されずにそのまま移動する

表のセルを選んだ場合、Touch Barには「フォーマット」「オートフィル」「数式」の3つのボタンが表示される。それぞれのボタンをタップするとさらにそれぞれの設定になる。

セルを一つ選択した場合の表示

「フォーマット」は書式の設定以外のセルの属性を決めるもの。「\」や「%」「日付」などセルの中に入っている数字をどの属性で表示するかを指定できる

「オートフィル」はセルに設定されている計算式を他のセルにも自動的に指定するもの。押すとそのセルがある行列を一気に書き換えるので利用には注意しよう

「数式」はセルに計算式を設定するもので、「合計」「平均値」「最小値」「最大値」「カウント」はボタンになっていてワンタッチで指定できる

「数式を編集」を押すと、セルに数式ダイアログが表示される

あとはグラフを選んだときにグラフに表示された数値ラベルの有無を指定できる。

グラフを選ぶと「数値ラベルを隠す(表示)」というボタンが表示される

円グラフだと、それぞれの項目が示す%の表示の有無を指定する

やはりTouch Barは登場したばかりで、決して「これ便利!」というところまで来ていないという印象だが、これから先の進化が期待できる部分とも言えるだろう。

Microsoft Officeとの互換性

多くの人が気になるのはExcelとの互換性の部分だろう。少なくとも一般的な関数の部分では、ほぼExcelと同じものが利用できると考えていい。「合計」は「sum」、平均は「average」で指定の仕方も同じだ。使える関数はツールバーの「数式を編集」を選ぶと右側のインスペクタに一覧が表示される。一部サポートされていない関数がある場合は計算された値に置き換えられるので注意が必要だ。

メニューバーの「数式を編集」を選択。先ほど説明したTouch Barの「数式を編集」でも良い

インスペクタに関数の一覧が表示された。一番上の表から種類別に表示を変更できる。真ん中の部分は関数の用例が書いてあるので、これを参考に数式を記入しよう

いくつかの表が含まれるNumbersのファイルをExcel用に書き出してみよう。表はそれぞれ別のワークシートになるので、Excelでは違うシートに別々に書き出される。またそれらを概要を解説する表紙が追加され、どの表がどのワークシートに書き出されているかが説明される。

[ファイル]-[書き出す]から「Excel…」を選ぶ

「概要のワークシートを含める」にチェックが入っていると、内容を説明する表紙が追加される

Excelに対応できないグラフなどは自動的に書き換えられる

書き出したファイルをExcelで開いたところ。表紙が追加され、表とグラフが別々のワークシートに収められているのがわかる

グラフとその他のオブジェクトが1つのシート上にまとまっている。インタラクティブグラフはExcelとの互換性がないため、普通の棒グラフに書き換わった

ExcelのファイルはNumbersで直接読み込むことができる。この場合、複雑な表や独自の書式だとずれてしまう場合がある。また、指定されているフォントなども自動的に置き換えられる。そして一番のポイントはExcelで使っていたマクロは機能しない点だ。自動計算のためのマクロを使っていた場合は、Numbersでは使えないので注意しよう。 これらの問題点はダイアログで表示される。またNumbersで開いたExcelファイルは閉じるときに自動的にNumbers形式のファイルとして保存される。

Excelのテンプレートを読み込んでみたところ。フォントが自動的に置き換えられ、チェックボックスは押すことができない。フォントが置き換えられたというメッセージがダイアログで表示されている

iPhoneではどう使えばいい?

NumbersでもPagesでもそうだが、iPhoneでファイルを最初から作るというのはかなり無理があるだろう。処理能力的には問題ないが、画面の大きさなどを考えるとオブジェクトの移動や表の大きさの変更など、ある程度画面の大きさがないとできない操作があるためだ。

iPhoneで新規のシートを作って拡大したところ。大きさ的にはこれくらいにならないと作業できないが、これではファイル全体のイメージも掴めない

Numbersの場合、基本的なファイルはデスクトップ環境で作っておいて、iPhoneに読み込んだらテンプレート的に使うのが正解だろう。例えば製品の見積書を作りたいという場合は、会社名などの基本的なヘッダ部分や見積もり項目を書く枠とそこに埋め込む計算式を作っておこう。MacユーザーはMacBookやiMacで、WindowsユーザーでもiCloud.comを使えばWebブラウザ上で新しいファイルを作成することができる。保存はiCloudに置いておけば、iPhone/iPadから開くことができる。対応プリンタがあればそのまま印刷も可能になっている。

Mac上でNumbersの見積書を作成し、iCloud上に保存

iCloud上に保存されたファイルをNumbersで表示。選択して開くことができる

修正する部分がある程度決まっていれば、拡大して扱うこともできるだろう。オブジェクトの追加などはしなくていいようにテンプレートを作り込もう

対応するプリンタがあればiPhoneからでも出力が可能

もちろんPagesのときに紹介した共同制作機能も利用できる。会社からファイルを受け取って、修正指示を行うなどの目的にも利用できるだろう。

NumbersはExcelのマクロのような自動化機能を利用しないのであれば表計算ソフトとして十分活用できるものになっている。最近は数値の書き換えを防止する意味でも相手先にExcelのファイルを直接渡すようなこともなくなった。提出する文書を印刷したりPDFにしたりするのであれば、見栄えの良い文書を作りやすいNumbersは十分に業務利用できるものと言える。Excelを導入する前に一度使って検討してみてはどうだろうか。