FOWLPの市場規模は年間6000億円?

さて、「世の中を騒がしているFOWLPってこれからどうなるか?」と言う講演であるが、明島氏は、FOWLP市場規模から話を始めた。

世間で注目を浴びているFOWLPは、シンプルで機能的なパッケージである。ただし、シリコンウェハ(前工程)のプロセスであるスパッタリングやリソグラフィなどを使って再配線層を形成する必要がある。今までは、先端パッケージはフリップチップから、TSVを使った2.5D/3Dパッケージへ移行すると言われていたが、製作が難しく、コストが高いため、一気には移行せずに、FOWLPへ移行する方向に動いている。「2016年、Appleが、TSMCの技術を使ってiPhone 7用のA10アプリケ―ション・プロセッサ(AP)にFOWLPを採用したのがきっかけで、皆の注目が集まった。今後はAppleだけではなく、ほぼすべてのアプリケーションプロセッサにFOWLPが採用になり、2020年には5億個/年のアプリケーションプロセッサにFOWLPが採用される、という調査レポートも出ている。フランスの調査会社Yole Developmentは、今後、スマートフォン1台当たり10個あるいはそれ以上の半導体チップにFOWLPが採用されるようになると見ている。同社の予測によると、今後, FOWLPは年率32%で市場が拡大し、2020年には25億ドルを超える(図3参照)。この成長率がさらに継続するとして計算すると、2023年までに5000億円を超える市場規模になる」と明島氏は話す。

同氏は、私見であると断ったうえで、近い将来のFOWLPの市場規模は、世界半導体市場規模を出発点にして、表1に示すさまざまな仮定を元に、6000億円/年とはじき出した。これより、FOWLPの設備市場規模は6000億円、材料市場規模は2400億円/年規模と予測した。設備や材料企業にとっても、「とてもおいしい市場になる」と明島氏は語る。

この市場規模の数値を、スマートフォンの年間市場出荷台数をもとに検証してみよう。スマートフォンの年間出荷台数は15億台と言われており、1台のうちの10個の半導体チップにFOWLPが採用され、1個の実装コストが40円とすると、40円×10個×15憶台=6000憶円となる。したがって、FOWLPの市場規模が6000億円/年と言う予測は、「そんなに間違いではないだろう」と明島氏は言う。

図3 FOWLPの市場規模予測。縦軸はFOWLP市場規模(単位:百万ドル)、横軸は西暦(年)。赤い棒は図2のように平面にチップを搭載した単純なFOWLP、橙色の棒は複数チップを積層した3次元高密度FOWLPを指す。FOWLPは当初は開発者のInfineonが細々と導入していたが、ほぼ泣かず飛ばず状態だった。2016年にAppleがTSMCの技術を使って導入すると、急に普及しだし、今後急成長していくことが見込まれる (出所:Yole Development Press Release、2016.8)

(1) 世界半導体市場 33兆円/年
(2) パッケージテスト市場 (1)の1割として3.3兆円/年
(3) パッケージ市場 (2)の7割として2.3兆円/年
(4) FCBGA/FBGA市場 (3)の5割として1.2兆円/年
(5) FOWLP市場 もしも(4)の5割がFOWLPに替わるとすると6000億円
(6) 製造ライン能力 50憶円/年(=価格4万円/350mm角パネル×10k/月×12カ月)
(7) 必要ライン数 120ライン(=(5)の6000億円/(6)の50億円)
(8) 設備市場 6000億円(=(6)の50億円×(7)の120ライン)
(9) 材料市場 2400億円/年(=(5)の6000憶円の4割)
表1 半導体市場規模を出発点としたFOWLPの市場規模予測(FCBGA=Flip Chip Ball Grid Array、FBGA=Fine Pitch BGA) (出所:明島氏講演をもとに著者作成)