―― ソニーのテレビの高付加価値はどこにあると考えているか。

高木氏「やはりテレビの高付加価値の源泉は、画質である。たとえば、今回発表した有機ELテレビのA1Eシリーズは、コントラストが素晴らしいという特徴がある。有機ELパネルに、ソニーが独自開発したシステムLSI「X1 Extream」を組み合わせ、アップコンバージョン技術やHDR対応などの機能をすべて組み込んだ。有機ELの良さを感じてもらえる画づくりを実現している。

だが、ソニーの画質という点では、液晶テレビの『Z9D』がフラッグシップ。これが、BRAVIAが考える画質の進化の姿である。いかに横展開、下方展開していくかということになる。今回、すべてのLEDを完全独立駆動させる独自開発のバックライト技術『Backlight Master Drive(バックライト マスタードライブ)』を搭載したが、液晶テレビのバックライトコントロールは、業界ナンバーワンの技術だと自負している。将来的には、ピクセルごとに光らせることが究極の技術となるが、この技術は、そこに向けたステップになる。これが差異化として打ち出せるものになっている。

一方、有機ELテレビのA1Eシリーズで採用した画面を振動させて音を出すという音響技術は、かつてソニーが取り組んできたフラットスピーカーの技術や、円柱型スピーカーシステムの技術の蓄積があって実現したものである。これは、ソニーにしかできないものであり、改めて技術の蓄積の大切さを感じた。継続してきたことが形になってきた」

【左】ソニーブースに展示された有機ELテレビ「BRAVIA A1E」【右】4K HDR対応プロセッサである「X1 Extreme」

高木氏「テレビが大画面になればなるほど、スピーカーの配置が難しくなる。当然、スピーカーは、真横部分に配置した方がいいが、それではあまりにも幅を取りすぎて、テレビの設置場所に困る。今回、スピーカーを排除し、画面を振動させ、画面そのものをスピーカーにしてしまうことで、デザイン的にもシンプルで、性能的にも合致するものができた。有機ELならではの薄さを生かし、デザイン上の高付加価値を実現したものになる。

これが他社との差異化である。有機ELだから画面がきれいである、という提案だけでなく、ソニーの製品として音を含めた性能とデザインが完成していないと、付加価値が提供できたとはいえない。これをひとつのパッケージとして提供できたのが、今回のA1Eシリーズということになる。

ソニーは、高品位な商品を買ってもらいたいと考えている。テレビでは、プレミアムセグメントと呼ばれる2,500ドル以上の価格帯で、しっかりとシェアを取りたい。いいものを、いい形で体験してもらい、感動価値を提供し、それを評価してもらうことで、新たな市場を創出していきたい。そこに、ソニーを選んでもらう価値がある。結果として、プレミアムセグメントの市場を大きくしていくことができると考えている。この姿勢は、オーディオでも同じである」

―― 日本の市場と、米国の市場ではモノづくりに違いはあるか。

高木氏「米国では、大画面であり、ストリーミングに対応し、それを利用するためのユーザーインタフェースが重視される。Android TVが最初に受け入れられた市場も米国である。これに対して、日本は50型クラスでどう差異化するかがポイント。また、レコーダーが中心の文化でもある。それぞれの市場に対応したモノづくりと、マーケティング戦略が必要だ」