ビッグローブは19日より、同社のMVNO事業においてiPhone SEの取り扱いを開始した。取扱うモデルは最新のiPhone 7ではないものの、人気端末と格安通信の組み合わせにより、MVNOの勢力図に影響がでるかもしれない。

SIMフリーiPhoneを用意すればMVNOのSIMを挿しても使えるが、MVNOが直接iPhoneを取扱うことに意味はあるのか

ビッグローブが扱うiPhone

ビッグローブはiPhone 6/6 Plusを昨年11月から取扱いを開始。そしてこのほどiPhone SEを加え、iPhoneシリーズの取り扱いを3機種に拡大させた。各商品は日本以外の国向けの新品もしくは新品並みの品質水準を確認した調整品となる。

このため、ACアダプタが同梱されていない、カメラのシャッター音が鳴らない場合がある(調達先により異なる)、iPhone SEではFaceTimeアプリも使えない、といった制限はあるが、MVNOの格安通信でiPhoneが使えるのは魅力的なところだ。

新品もしくは新品相当のiPhoneの取り扱いについては、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク以外では、大手のサブブランド的位置づけのワイモバイル、UQコミュニケーションズほか、一部のMVNOも取り扱っているが、"大手MVNO"という括りではビッグローブのみだ。

もちろん、従来からSIMフリーiPhoneをアップルストアで購入し、MVNOのSIMを挿して格安な通信料金でiPhoneを運用することは可能。ビッグローブのSIMもiPhoneに対応しており、今さらiPhoneを取扱ったところで意味はないのではないか、と見る人もいそうだが、そうした見方はMVNOの現状を見誤りかねない。

メインターゲットを考慮する

なぜなら、MVNOのメインターゲットは、今やSIMフリーiPhoneを自ら購入して、開通作業を行うような人たちではないからだ。スマートフォン関連の情報に受動的で、その利用にあたって煩わしさを感じず、手軽に使いたい人たちだ。だからこそ、MVNOは契約・開通をスムーズにするために量販店での対面販売を強化したり、実店舗で対応したりしてきた経緯がある。

そうした人たちに向けて、「ビッグローブなら人気のiPhoneが格安な通信料金で使える」というアピールは大きな意味を持つ可能性がある。

MM総研の調査によると、2016年9月末段階で、MVNOにおけるビッグローブのシェアは、NTTコミュニケーションズ、IIJ、楽天モバイル、ケイ・オプティコムに次ぐ5番手となっている。このうちiPhoneの取扱いはビッグローブのみ。狙うべきターゲットにiPhoneのブランド力を活用した場合、シェアにどういった変化がおきるのか。そうした大きな視点をもって今回のニュースを捉えたほうがいいだろう。スマートフォンのスペック・機能に大差がなくなるなかで、iPhoneブランドの神通力がどの程度のものかをはかるひとつの尺度にもなりそうだ。