炊飯器なんて炊ければどれも同じ――。一昔前はそんな風に思っていた人もいるだろう。だが、今は変わってきている。従来のマイコン式、IHといった熱の加え方のバリエーションから、釜の材質や厚さなど、よりコメがおいしく炊ける高付加価値の炊飯器が各種登場している。炊き上がりの好みも家庭によって分かれるところだから、炊飯器を見れば、その家庭の「食」への考え方が見えてくるといえるかもしれない。そんな炊飯器で、アイリスオーヤマが、快進撃を続けている。

「値ごろ感」の追求

プラスチック製衣装ケースなどの生活雑貨でおなじみのアイリスオーヤマは、5.5合まで炊くことができるIH炊飯器「銘柄炊き IH ジャー炊飯器5.5合」を発表した。家電量販店などを中心に初年度10万台の出荷を目指すという。

IH炊飯器「銘柄炊き IH ジャー炊飯器5.5合」

今回参入する5.5合IH炊飯器は炊飯器の中でも市場規模が大きいカテゴリー。だから当然、ライバルも多い市場だ。同社が今まで出してきた炊飯器はいずれもコメの銘柄に合わせて、コメ本来の味を引き出す最適な炊き方ができることをうたったものだが、ここでも、“炊き分け”で勝負する。

31の銘柄を、特徴の似た6通りに分類し、6パターンの炊き方ができる。この機能がついて、参考価格1万9800円(税抜)だ。同社としては、ただ安いのではなく、コメの特徴を最大限に生かした味にこだわりつつ、価格を抑えた「値ごろ感」で勝負したいそうだ。

コメへの知見で競合にアドバンテージ

値段が高いと思うか、安いと思うか、すべては炊きあがったごはんに答えがある。

炊飯器を開発するためには、コメに均一に熱を伝える、温度を制御するなどといった技術が必要だが、それ以前に、コメそのものへの知見も必要になってくる。同社の本社は、コメどころ宮城県。東日本大震災からの復興を地元の企業として応援する意味などから、実は、2013年に精米事業に参入し、販売しているコメの評判は高いという。

2合分に小分けされているので、味が落ちにくいし、使いやすい