VRゴーグルに装着し、コンテンツと連動した"ニオイ"を出力するデバイス「VAQSO VR」が17日、発表された。本稿では同日開催されたメディア関係者向けの発表会の様子をお届けする。

「VAQSO VR」記者発表会。VAQSO CEOの川口健太郎氏(左)と、スペシャルアドバイザーを務める黒川文雄氏が出席した

スニッカーズ大の後付けデバイス

このほど発表された「VAQSO VR」は、日本のスタートアップ企業・VAQSO(バクソウ)が手がけるデバイス。サイズは12(W)×3.5(H)×1.5(D)cm、マグネットでPS VR、HTC VIVEなど既存のVRゴーグルの下に取り付けることができる。ニオイを発生させるカートリッジを内蔵し、ワイヤレスで通信を行うことでデバイスを制御し、ゲームなどのコンテンツと連動してニオイを発生させる仕組みだという。

「VAQSO VR」の試作品をお菓子の"スニッカーズ"の袋の中から取り出し、小ささをアピールする川口氏

「VAQSO VR」の製品サイズは12(W)×3.5(H)×1.5(D)cm

VRゴーグルへの取り付けはマグネット式。ニオイ吹き出し口はちょうど鼻の前に位置する

発表会で用意されたプロトタイプには、3種類のニオイのカートリッジを内蔵。ゲームの展開に応じてカートリッジ前面にあるシャッターが開閉し、各々の吹き出し口からファンでニオイを送り出すことができる。製品版では、5種類~10種類程度のカートリッジが装填できることを目指しているとのことだ。

ニオイデバイスの競合は2社、アドバンテージは筐体サイズ

VRゴーグルとはワイヤレスで通信するため、ケーブル等の接続は不要だ

バッテリー式でUSBで充電。1回の充電で、本体自体は連続30時間使用できる

VAQSOのCEOを務める川口健太郎氏によると、ビジネスモデルとしてはカートリッジ販売による収益構造を考えているという。ニオイを発生させることができるVR向けデバイスとしては、既に「feelreal」「Rousulus Rift」という製品が存在しているが、「VAQSO VRはそれらに比べて圧倒的に小さいのと、複数の香りが出せるのがアドバンテージ」と川口氏。

現時点での競合製品は3製品。圧倒的な小ささと複数のニオイが出せることが特徴とのこと

VAQSO CEOの川口氏は、ZaaZ(ザーズ)のCEOも兼務。ZaaZではニオイの出力装置を店頭に設置するプロモーションなど、ニオイに関するビジネスでは既に多数の実績を持つ

VAQSOは2017年1月に設立されたスタートアップで、本社はサンフランシスコに置く。拠点を米国に置いた理由としては、「スタートアップに関しては、日本よりもアメリカのほうが資金が集まりやすい」(川口氏)ためとのこと。開発は東京を拠点に行う。

2017年冬のリリースが目標、価格は「1万円以内」か

発表会には、元コナミ社員で現在は様々なゲーム会社などのアドバイザーやプロデューサーとして活動する、同社のスペシャルアドバイザーを務める黒川文雄氏も出席。「2016年は"VR元年"と言われたが、何かが足りないと感じていた。2017年はみんながチャレンジをした結果、その足りない何かを模索していく元年になるのではないか。その1つが"臭覚"の追求。パートナーと協力してよりよいデバイスにしていきたい」と意気込みを語った。

「ゲーム業界の中でもVRは特に興味を持っている分野」と話す、スペシャルアドバイザーの黒川文雄氏。今後、人脈や資金面の調達などでバックアップしていく

製品のロードマップは、現時点でVR開発者向けにソースコードを公開して協業者を募り、2017年春からゲーム会社や広告会社、OEM企業などと開発を進め、同年冬のリリースを目指しているという。現時点では価格は未定とのことだが、黒川氏はあくまで私見と前置きした上で、「さまざまなユーザーに使っていただくことを考えると、1万円以内が適切ではないかと考えている」とコメントした。

VAQSOの製品化までのスケジュール

会場で行われた、VAQSOと連動したシューティングゲームのデモンストレーション

開場ではシューティングゲームのデモが行われ、空中を飛び交う物体を撃つと、火薬のニオイや打った桃の香りが漂った。ファンを制御することにより、対象物に近づくとニオイが漂ってくるなど、ニオイで距離を表現することも可能だという。他にもフライドチキンやコーヒー、カレー、土のニオイ、お風呂上りの女の子のニオイなどさまざまなニオイを用意しているという。