イラスト : まずりん

鍼灸師・若林理砂さんが、あなたの近くにいそうなキャラたちの健康相談に答えるこの連載。シーズン1で登場した個性豊かな患者さんたちの「再診」で、現代を生きる人が陥りがちな、体と心の関係を探っていきます。

女性、30代、IT企業営業職
前回は肩こり・頭痛のために来院。大好物の甘い物の食べ過ぎ、そのための食事の減量が自律神経失調を引き起こしていました。今回はどんな不調を抱えているのでしょうか?

おや、再診ですね。どうなさいました?

「……先生、先生は結婚も出産もされてるんですよね?何で、お子さん生んだんですか」

いきなりなんですか、そんな思いつめた質問を。前におっしゃってた肩こりと頭痛はおさまってますか?

「はい、それはだいぶ楽になったんですが、ちょっと精神的につらくって」

何かあったんですね。

今日の患者さんの悩み「家族から結婚・出産を迫られ気がふさぐ」

「この間、田舎で法事があったので、実家に帰ったんです。そうしたら、親戚中から結婚は? 子供は?って始まっちゃって」

よくありますよね、そういうことって。親戚が集まる場だと必ずと言っていいほどありますよね。実家に帰るのが嫌になったでしょう。

「はい。今お付き合いしている彼氏はいるんですけど、両親に紹介すると『結婚する気はあるのか!』って彼に詰め寄りそうなんで、紹介しないでいるんです。今、お互いに仕事がノッてきているところでもあって……」

そうですよね、30代ってそういう時期でもありますし。で、何だかもろもろ嫌になってしまったってことですね。

だいぶ責任のある仕事を任されるようになったということは、残業とかも増えてます?やはりそうですか。目の下、お化粧でうまく隠してらっしゃいますけど、クマができてしまってますね。睡眠時間、足りてなかったりします?

「はい、このところちょっと足りていない自覚はあります」

そんな中でも法事に帰るって、それだけでも褒めてほしいところなんですけどねえ。

結婚と出産、若林先生の「理由」

私自身の話をしますとね、結婚や妊娠・出産には全く肯定的ではなかったんですよ。夫とは、夫婦別姓法案が通ったら結婚しようなんて言っていたくらいでして。だけど、不動産を買って共有財産にしたいという考えで一致して、その時に結婚しているほうがいろいろと面倒が少ないとのことだったので、ほぼ「ついでに」結婚しました。すごい話でしょう?(苦笑)

母親ともいろいろありましたので、子供を持つことも考えていませんでした。ですが、32歳くらいのころに吹っ切れまして、子供を持つに至りました。

「そうだったんですね。私は吹っ切れるかどうか…」

でも、産んだら産んだで、親戚らがワーワー言うのは変わらなかったですよ。だから、『そうか、これはいつまでもこういうもんだ』と妙に納得して、それ以来気にならなくなりました。

疲労は心身の「防御力」を下げる

お顔拝見していると、クマも勿論なんですが、疲労が蓄積しているのが見て取れます。こういう時って、ちょっとしたことでもココロとカラダにすごい打撃を受けやすいんですよ。防御力が下がってるとでもいうのかしら。

「防御力、ですか……弱ってる時に聞いたから、こんなに気になっちゃってる、ってことなんですね」

ええ。だから、今度もし休暇があってもご実家に帰らないで、ゆっくりして休んだほうが良いと思います。お休みを自分のために使って、睡眠を整えて、彼氏とおいしいレストランにでも行ったほうがいいです。

「はい、そうしてみます。彼、もうすぐ誕生日で。誕生日が離れてるから、やっと同い年になるねって話してたところだったんです。よさそうなお店、探してみようかな」

彼氏も同い年ですか。きっと同じような目にあっているに違いないですから、今度の休暇の時に少し腰をすえて話してみたらいかがですか?ひとりで抱え込まずに話した方が、ラクになると思いますよ。

養生してね、お大事に!

「若林理砂のあるあるカルテ シーズン2」は今回で最終回です。これまでのご愛読、ありがとうございました!