スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「5G」についてです。

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「5G」は、LTEおよびLTE-Advanced(4G)の次世代規格に位置付けられる第5世代移動通信システムです。日本ではNTTドコモなど通信キャリアを中心に、2020年の商用サービス開始を目指し研究開発および実証実験が続けられています。

2017年1月現在、5Gのはっきりとした定義は存在しませんが、VHF帯などの低い周波数帯から30GHz以上のミリ波帯まで複数の周波数帯を、場所や時間、用途に応じて最適な組み合わせにすることで、電波の効率的な利用と安定した高速通信の実現を目指しています。

最終仕様ではないものの、5Gにおける理論上の最高速度は10Gbps以上と、現行規格(LTE)の約1000倍にも達します。そのため、4K/8Kという高解像度の映像配信など、高速性と単位時間あたりの実効転送量(スループット)が求められるサービスでの活用が見込まれています。

5Gは単一の技術仕様ではなく、さまざまな通信技術の集合体として実現されると考えられています。周波数帯の利用効率を高める「NOMA(Non-Orthogonal Multiple Access、非直交多元接続)」、大量のアンテナとビームフォーミング(強い指向性により一定方向に電波を送る技術)によピンポイントの電波割り当てを可能にする「Massive MIMO」は、その代表的な技術と言っていいでしょう。

5Gは自動運転や遠隔手術といった一瞬のタイミングのずれも許されない用途での活用も想定されており、低遅延性が重視されています。開発目標は1ミリ秒以下とされており、4Gの50ミリ秒(1ミリ秒=1000分の1秒)と比較すると、かなりゼロ遅延に近づきます。視覚や触覚のフィードバックを瞬時に行うことが可能になれば、遠隔医療の進化にも貢献すると考えられます。

IoT(モノのインターネット)の拡大も、5Gと無縁ではありません。やがては数百億、数千億もの機器がインターネットに接続されるとの予想もあり、不要な信号の抑制や消費電力の効率化にくわえ、多様な機器を一元管理する仕様が求められています。帯域幅と速度を抑える代わりに低消費電力と広域のカバーを実現する「LPWA(Low Power Wide Area)」は、5Gの持つもうひとつの顔といえるでしょう。

NTTドコモの5G実現までのタイムスケジュール