名古屋のご当地グルメ全般を指す"名古屋メシ"。味噌カツ、味噌煮込みうどん、手羽先、ひつまぶし、きしめんなど、古くから地元で親しまれている料理が多種多彩にそろうが、近年はここに割って入らんとする新・名古屋めしの開発も活発になっている。

そんな中、新鋭ホテルによるアップグレード版が登場した。ストリングス ホテル 名古屋の"進化系・名古屋メシ"だ。

ストリングス ホテル 名古屋の"進化系・名古屋メシ"

おしゃれなホテルの女性を意識した新メニュー

"新感覚で食べられる名古屋メシを"と語る、福原聡 総料理長

2016年1月、名古屋駅に開業したストリングス ホテル 名古屋は、ゲストハウスウエディングを全国で展開するホテルグループによる都市型リゾートホテル。緑豊かな庭園や荘厳な大聖堂を擁し、ブライダルや名古屋観光の拠点としての需要も高い。一言で言えば"リッチでおしゃれな"ホテルだ。

このホテル内のNYダイニング&カフェ「グラマシースイート」の新メニューとして12月1日にデビューしたのが、"進化系・名古屋メシ"の3品、「松阪ポークのヘルシー味噌カツサンドイッチ」(1,800円)、「リッチパンケーキ フォアグラと浜名湖産うなぎ トリュフソース」(1,800円)、「新感覚フレンチトースト"三重奏"小倉あんと抹茶アイスクリーム」(1,300円)である。

「観光で利用される方が多いので、『名古屋メシを食べたい』というご要望が多い。とはいえ、街中で食べられるものと同じでは、ホテルで出す意味がない」と語るのは、福原聡 総料理長。女性を意識してヘルシーな要素も加え、新感覚で食べられるメニュー作りを意識したという。

「NYダイニング&カフェ グラマシースイート」の店内

味噌カツはなんとあのチューブ入り調味味噌を採用!

「松阪ポークのヘルシー味噌カツサンドイッチ」(1,800円)

さて、どんな進化を遂げているのか実際に賞味してみることにしよう。

まずは、「松阪ポークのヘルシー味噌カツサンドイッチ」を実食。「松阪ポーク」のカツはやや赤みを残し、ジューシーな柔らかさをサクサクした衣で包んでいる。決め手は味噌のソースだが、まろやかな味噌のコクはありながら決してこってりはしていない。

ソースのベースは何かと聞いてみると、なんと、名古屋の家庭には必ず常備されていると言われる、チューブ入り調味味噌「つけてみそかけてみそ」だった!! バーベキューソース、マスタード、はちみつを加えた奥行きのある味わいの中に、どこか懐かしさを感じる理由はこれなのか、と納得。さらにキャベツとパパイヤをサンドし、シャキシャキ感と甘みをプラスしている。アメリカンタイプの分厚くボリュームあるサンドイッチで、食べ応えも十分だ。

「リッチパンケーキ フォアグラと浜名湖産うなぎ トリュフソース」(1,800円)

続いて「リッチパンケーキ フォアグラと浜名湖産うなぎ トリュフソース」。ひつまぶしに代表される、名古屋人が大好きなうなぎをメインの具に使い、フォアグラとトリュフソースを合わせてゴージャスに仕上げている。うなぎは名古屋人好みのこってりした味つけだが、付け合わせのクリームポテトを合わせると、優しい酸味が加わって、味の変化を楽しめる。スイーツ系のパンケーキとは一線を画すぜいたくな一品だ。

「新感覚フレンチトースト"三重奏"小倉あんと抹茶アイスクリーム」(1,300円)

また「新感覚フレンチトースト"三重奏"小倉あんと抹茶アイスクリーム」は、名古屋独特の喫茶スイーツ、小倉トーストがモチーフ。1枚はトースト、そして、なんともう1枚は「麩」が素材として使われている。食べてみると、卵がしっかりしみ込んだフレンチトーストらしさもあり、それでいて麩ならではのもっちり感もあり、何とも不思議な食感だ。

小倉あんは甘さ控えめで上品に炊いてあり、さりげなく金箔をちらしてあるのが、名古屋人の金シャチ愛をくすぐってくれる。トーストとあんの間を取り持つのは、抹茶処・愛知県西尾市の抹茶を使った抹茶アイスクリーム。しっかりと香りと苦味のあるアイスクリームに、オレンジとキャラメルのソースをかけると、さらにほろ苦さがプラスされ、小倉あんの甘さを引き立ててくれる。

名古屋のクラシカルな要素を生かした正当進化

「ホテルメイドにこだわりつつ、技巧に走りすぎず、『つけてみそかけてみそ』をあえて使うなど、名古屋の人が長く愛しているクラシカルなもの、普遍的なものを生かすことを心がけました」と福原 総料理長。

名古屋人が日頃から慣れ親しんでいる名古屋メシとは、ひと味もふた味も違う。けれど、味噌カツなら味噌のまろやかさ、パンケーキならうなぎのタレのコク、フレンチトーストなら小倉あんの甘みと、ポイントとなる要素はしっかりと生かされている。"名古屋メシの進化系"というコンセプトに納得するとともに、何よりベタなイメージが強い名古屋メシが、こんなにおしゃれで上品に変身することに、感動すらおぼえてしまった。

ストリングス ホテル 名古屋

もともと名古屋メシは「味噌+カツ」や「うなぎ+お茶漬け」、「小倉あん+トースト」など、意外なかけ合わせを生み出すチャレンジ精神や、それを可能にする懐の深さから進化・発展を遂げてきた。それを思えば、これまでにない創意工夫を採り入れた、こんな"進化系"もアリなのかも。県外の人には名古屋メシに興味を持ってもらうきっかけとして、地元の人には名古屋メシの新たな可能性を見つけるヒントとして、一度味わっていただきたい。

●information
ストリングス ホテル 名古屋「NYダイニング&カフェ グラマシースイート」
愛知県名古屋市中村区平池町4-60-7
営業時間: 11時~15時、17時30分~22時(ラストオーダー: 各1時間前)
定休日: 不定休
アクセス: 名古屋駅桜通口より徒歩15分

※価格は税別

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。