米インテルが開催した「Intel AI Day」では、同社の人工知能戦略が明らかになった。近年、AI分野ではディープラーニングの台頭に伴いGPUコンピューティングに押され気味の同社CPU群だが、AI市場においても再び存在感を表す意気込みが感じられる。

AI市場にかけるインテルの本気

インテルは半導体市場における世界第1位の企業であり、特にCPUにおいては市場の8割近いシェアを持つ。だが、近年はスマートフォン・タブレット向けのARMアーキテクチャの台頭とPC市場の縮小などで以前のような存在感は薄れており、またAI市場においては、NVIDIAのGPUをディープラーニングに利用する手法が定着してからは、CPUは完全に脇役のような位置付けになってしまっている。

同社は2020年にはAI向けのコンピューティングサイクルは現在の12倍に拡大すると推測しており、クラウドからデバイスまで幅広く半導体を提供する同社にとって、AIに注力するのは、再び業界の中心として返り咲くための戦略として、当然の帰結ともいえる。

インテルは2015~2016年にかけて、AI関連の企業を多数買収している。この中には独自のコグニティブコンピューティングプラットフォームを持つSaffron Technology、組み込み機器向けのコンピューティングビジョン用SoCの開発を行うMovidius、ディープラーニングを専門とするNervana Systemsなどがある。

特にNervana Systemについては非常に重視しており、同社のAI向けプラットフォームを「Nervana Platform」、データセンター向け製品群を「Nervana Portfolio」と名付けたほどだ。この中には、同社の「Xeon」および「Xeon Phi」といったCPU製品群も含まれている。

Nervana PortfolioとしてCPU製品群も紹介された。2017年度以降に製品化される世代がこれらの中に含まれる

Xeonプロセッサはワークステーションなどに搭載されるCPUであり、研究室などで実際にAI開発に使われているCPUとしてはおそらく最大のシェアを誇る製品だ。またXeon Phiはメニイコア(数十以上のCPUコアを搭載するプロセッサ)のMICアーキテクチャを採用したCPUおよびコプロセッサボードの製品であり、GPUと同様に並列コンピューティング向けになる。Nervanaの中では高性能なマシンラーニング向けに提供される。

さらに、学習済みのディープニューラルネットワークを使った推論システム向けにはXeonと昨年買収したAltera通信社のArria 10 SoC(FPGA)の組み合わせを、ディープラーニングの学習向けにはクラス最高のニューラルネットワーク性能を実現するべく、XeonとNervanaのテクノロジーを投入する「Lake Crest」コプロセッサの組み合わせが提供される。

Xeon Phiについては2017年に販売される次世代版「Nights Mill」にいてディープラーニング性能が4倍に向上し、32ノードにスケーリングした場合はマシンラーニングにかかる時間が31倍高速化されるとしている。また「Lake Crest」およびXeonと統合された「Knights Crest」世代が投入されることにより、マシンラーニングにかかる時間は2020年までに現在の100分の1に短縮できるとした。

Lake Crestはコプロセッサボードとして提供される見込み。CPUに統合されるKnights Crest世代は2018年前後の登場と見られる