フェイスブックとインスタグラムによる女性起業家支援プログラム「#起業女子」の第1回ワークショップが、12月14日に東京で開催された。このワークショップでインスタグラムを活用している女性起業家として登壇したのが、オーガニック食材などを中心に扱うグローサリーストア「FOOD&COMPANY」を経営する谷田部摩耶さんだ。

「FOOD&COMPANY」オーナー谷田部摩耶さん

「私は学生時代から10年ほどニューヨークで生活していたのですが、結婚するにあたって帰国した際、東京は経済的に豊かなのに精神的な貧しさを感じる土地だと思いました」と谷田部さんは語る。

谷田部さんは学生時代は国際開発を学び、社会貢献にも強い興味を持っていたという。当時アメリカでブームになった、1足の靴を買うと途上国の子供にも1足の靴がプレゼントされるという「TOMS Shoes」の取り組みにも強くインスパイアされたという。社会貢献をしたいと考える谷田部氏の目に、東京は救われる側として映ったようだ。

「経済的には豊かなのにみんな幸せそうではないんです。辛そうな顔で満員電車に乗って通勤したり、無理をしている。経済発展の結果こうなってしまうのは違うと思いました。食や消費の乱れも感じました」(谷田部さん)

東京での生活に違和感を持ち、パートナーとともに世界各地を旅行。自分たちがすでに見てきたアメリカ、パートナーの出身国である中国の貧しい地区、幸せ指数の高いといわれる北欧などを10カ月ほどかけて旅した結果、普段の生活を大切にするということにフォーカスしたビジネスを立ち上げることを決意する。

「私たちにとって身近なものとして食、生活者に近い食のビジネスを考えて、食材の小売店というビジネスを考えました。全くノウハウのない状態だったので、生活費を稼ぐことを兼ねながら飲食店などでパートナーとアルバイトをしながら勉強しました」と谷田部さんは起業準備時代を振り返る。

手軽なインスタグラムを積極活用して認知度向上を実現

現在「FOOD&COMPANY」は、東急東横線の学芸大学駅の路面店を中心に展開。新宿ルミネにも出店しているほか、オンラインストアも手がけている。販売するのは独自のガイドライン「F.L.O.S.S(Fresh, Local, Organic, Seasonal, Sustainable)」に合致するもので、主にオーガニック食材や国産原料を使った調味料や飲料などだという。

「FOOD&COMPANY」

「路面店といっても少し奥まったところなので、最初はわざわざ探してきてくださる方がメインでしたが、最近では近所の方の買い物の場になっています。基本的に5km圏内、徒歩や自転車でいらっしゃるお客様が大半ですが、中には途中下車していらっしゃる沿線の方や、わざわざ車で遠くから来てくださる方もいます。売り上げとしては圧倒的に店舗主体で、オンラインショップは全体の10%程度です」(谷田部さん)

生活に密着した食の場でありたいという想いのかなう店になっているようだ。

店舗の立ち上げにあたっては大きな宣伝などはほとんどしておらず、地元での街頭チラシ配布程度。主体となったのはフェイスブックおよびインスタグラムでの告知だったという。

「特に何かを考えて選択したわけではなく、普段から使っているものを自然に選びました。開店前からティザー的に利用して行く中で、人が集まってきた感じですね。何か特別な仕掛けをしたということもないので、社会のニーズに合っていたから見つけてもらえたのだと思っています」と谷田部さんは語る。

起業後は、日々の入荷情報やオススメ情報、店舗で開催するイベントの告知、ワークショップのチケット販売への誘導、販売する食材の産地を訪問した時のレポートなどにインスタグラムを活用しているという。「更新頻度は多い方がよいですが、1日5投稿もしようと思うと大変。1日1投稿を意識しています。人の目に触れる頻度を保つことは忘れられないためにも、親近感を持ってもらうためにも大切だと思う」と谷田部氏は活用のコツを語る。

「FOOD&COMPANY」のインスタグラム

さらに、インスタグラムの提供するビジネスツールも活用しているという。インスタグラムのアカウントにフェイスブックのページを関連づけて企業のプロフィールを表示できるほか、投稿のインサイト確認や宣伝といった機能があるが、谷田部さんが特に利用しているのはインサイトのようだ。

「インスタグラムの同じスクリーン上ですぐにアクセスできる、わざわざログインする必要がないというのは、シンプルで大きなアドバンテージだと思います。FOOD&COMPANYの場合は業態的にも時間的なアクセスの偏りなどはないのですが、日々誰が見ているのか、どのくらい見られているのかというのはモチベーションアップにもつながりますし、反省点もわかります。うちの場合、写真に人が入っていると反応がよく、品物だけでなく手だけでも入れるように意図的にクリエイティブを改善しています」(谷田部さん)

売り上げとしては大きく伸びているわけではないとしながらも、地元に根付いた形で成長してきた「FOOD&COMPANY」は、まもなく起業3周年を迎える。インスタグラムを活用した起業に成功した1人として、谷田部氏は起業を考える人に向けて「タイミングが大切です。やれない理由やリスクを考えがちですが、やりたいことをやってみるといいと思います。動いてみたら変化することもあります」と前向きにチャレンジすることの大事さを語った。