子どもどうしのトラブル、親はどこまで介入すべき?

幼児から小学校低学年の子どもどうしの「たたかれた」「文句を言われた」などのトラブルに、親はどこまで入っていくべきか。

子どものトラブルが親どうしのトラブルに発展し、ひいては弁護士が間に入るケースもあるという。どうしてそこまで揉めるのか。

多くのママトラブルや子どものトラブル案件に関わってきたレイ法律事務所の高橋知典弁護士に話を聞いた。

最も多い"弁護士介入"トラブルは?

同事務所で扱う小学校低学年までの子どものトラブルの案件数は、増加傾向にあるという。高橋先生は、「トラブルは暴言や悪口も多いが、弁護士事務所にくるようなレベルになると一番多いのは暴力」と話す。

小学校低学年くらいまでの場合、殴って大ケガをさせるような暴力はほとんどなく、多くは髪をひっぱったり、たたいたり、といったレベル。ただ、突き飛ばされた結果、転倒してケガをすることはある。

転倒した場所が階段やコンクリートだと、受け身ができない子どもはケガが大きくなりがち。骨折はめったに聞かないが、歯が折れたという事例は、けっこうあるそうだ。また、暴力は体だけでなく物に対して向けられることもあり、帽子や服など、身に付けている物が汚されたり、壊されたりするなどの事例も少なくないという。

「こうしたトラブルに共通しているのが、繰り返してしまうということ」と高橋先生。ふざけの延長のような小さないじめも、常態化すれば子どもにとって大きなストレスになっていく。

SNSでの情報拡散が、弁護士依頼のきっかけになることも

子どものトラブルの場合、慰謝料が高額にならないことも多い。例えば相手の暴力によって乳歯がかけても、後遺症は残りにくいなどといった背景があるからだ。しかしそれでも多くの人が弁護士に解決を依頼するのは、「白黒はっきりつけたい」「相手から謝罪をもらい、気持ちの面ですっきりしたい」という気持ちがあるからだという。

加害者の親が「自分の子どもは悪くない」と信じている場合、SNSを通じて、仲良しのママ友などに、被害者の悪口や自分の主張を伝えていることも少なくない。こうなると、当事者だけの問題ではなくなってしまい、時には地域での評判にも関わってくるだろう。こういったケースなどで、第三者である弁護士に交通整理を依頼し、解決のきっかけを作る人も多いのだとか。

ただ、実際に裁判まで進む人は少ないそう。訴訟になると、解決に1~2年はかかるため、例えば保育園時代のトラブルが解決する頃には、子どもが小学生になっているということもあるからだ。結果的に多くの親は、弁護士の介入でけじめをつけ、トラブルの再発防止を優先させるという。

大事なのは母親がゆったり構えること

子どものトラブルが起きた時に大事なのは、親が気持ちを落ち着けることだという。「いざとなれば、転園や転校を考えてもいいし、学校を休んだっていい。相手に不法な行為があるなら、裁判で大ゲンカする権利もある」と高橋先生。

親が安定していれば、子どもには逃げ場ができる。親が崩れてしまうくらいなら、お金を払って弁護士に解決を任せてもいい、と考えることで、気持ちにゆとりを持つことができるかもしれない。

エアコン掃除やパソコン修理のプロがいるように、弁護士は人間関係修復のプロ。人間関係は誰でも扱えるため、つい自分でやろうと思いがちだが、やはり一定のレベルを超えたら、そこから先は"プロ"が必要のようだ。同事務所の場合、初回相談は1時間5,400円。本当に困ったら、弁護士にも相談できることを知っておくだけでも、子を持つ親にとっては心のお守りになるかもしれない。

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高橋知典 プロフィール

レイ法律事務所弁護士、第二東京弁護士会。自らもいじめを受けた経験から、子どもたちが健全に育つ環境を整える力になりたいと弁護士になる。法教育に力を入れており、いじめ、体罰、学校事故、停学・退学処分や、少年事件などの相談件数は年間300件以上の相談件数を誇っている。