図6 IHSグローバルの調査ディレクターである南川明氏 (提供:SEMI)

SEMICON Japanの併催行事である「半導体マーケティング・フォーラム」および「アジア中国半導体市場動向セミナー」でIHSローバルの調査ディレクタ―である南川明氏が講演し、中国半導体産業の過去・現状・今後について次のように述べた。

「中国政府の過去の半導体支援は成果が出なかった。例えば、2000年のSMICやGraceへの支援、2000年代前半のファブレス支援などだ。今回は、中国での半導体製造規模を年平均成長率20%以上で成長させ、2020年には13兆円規模にしようというものだが、本気にならざるを得ない背景がある。米国商務省は、中国がスーパーコンピュータ(スパコン)を軍事利用しているとの理由で、Intelのスパコン向けMPUの中国への輸出を禁止したほか、ZTEへのICの輸出禁止も検討している。こうした状況のため、中国が掲げる2020年の目標達成は困難と見られるが、2025年には達成されるだろう。そのため、中国政府は、2020年以降も半導体育成策を継続していくことが見込まれる」。また、「地政学リスクから、中国の半導体産業育成は、最重要プロジェクトで本気である。中国政府は技術獲得のためには、いくらでも資金注入を続ける。このためメモりの供給過剰が2020年までに起きる可能性が高い」とも述べている。

図7 産業タイムズ上海支局長の黒政典善氏 (提供:SEMI)

一方、産業タイムズ社の上海支局長である黒政典善氏は、「中国政府は1000億元以上のIC産業ファンドを組成し、半導体の先端技術開発と大型量産工場の投資に対して支援し始めている。例えば、湖北省武漢市に巨大なメモリ工場の建設計画が発表されているほか、IntelやSamsung Electronics、TSMCなどの海外企業も中国への投資を積極化している」と、投資が過熱していることを説明する一方、「中国政府は、2020年に向けて年率20%で半導体産業を発展させようとしているが、すべてが順調というわけではない」として、現地取材に基づき、以下のような話題を提示した。

  • 安徽省合肥市人民政府がDRAM量産工場建設を計画。元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏に協力を要請し、同氏はサイノキングテクノロジーという人材派遣・技術供与企業をを設立したが、この計画は失速してしまい、サイノキングは契約に失敗した。メモリ工場は武漢に集約の方向である
  • 武漢市では、XMCを核にして、2.8兆円を投資して半導体工場を建設することになっている。構想は立派で雄大だが、計画はまだ具現化していない
  • 武漢市のXMC既存ラインでは、米Spansionからの技術提供で、9層の3次元NAND型フラッシュメモリを45nmプロセスで試作することに成功したほか、今後は45nmか32nmプロセスを用いた32層3D NANDフラッシュの開発を計画している。世界トップクラスのNANDフラッシュメーカーに追い付くのは至難の業だが、中国勢は長期レンジで取り組んでいる
  • 米GLOBALFOUNDRIESは、2017年に重慶市で300mmファウンドリを開始する予定であったが、現在、一時凍結状態にある

また、黒政氏は、Semicon Japan併催の「中古半導体装置セミナー」でも講演し、「2015年時点で中国には300mmファブが9棟、200mmが18棟、150mmが32棟あったが、2020年にはそれぞれ24~29棟、23~28棟、32~34棟に増える計画だ。300mmファブの一部およびほとんどの200mmファブは中古装置でまかなう予定だが、200mmおよびそれ未満の装置が品薄で入手困難なため、200mm以下の工場の拡張が難かしい状況にある。そのため、200mmの予定を変更し300mmの中古装置を導入するケースもでてきている」と、現地での装置調達状況を説明。「中国政府の半導体製造装置国産化方針により、すでに露光、コータ・デベロッパ、エッチング、洗浄、熱処理、イオン注入、CVD、PVD、CMP、ウェハ検査、自動搬送など、ほぼすべてのプロセスに対応するサプライチェーンが整備されており、日本勢は品質で勝負することになるが、やがて日本勢にとっても脅威となるだろう」と、製造装置産業の進化も進んでいることを強調。日本勢のさらなる開発能力の加速などを促した。