【レポート】

ビール好き注目!キリンが国産最軽量の新型アルミ缶を発表 - 何が変わったのか、開発者に聞いてきた

突然だが、筆者は大のビール好きだ。最近はコンビニでも海外のビールが手に入るし、季節に合わせた多彩な商品が売られていて、ビール好きとしては非常に嬉しい状況となっている。消費者がさまざまなビールを味わえるのは各メーカーの開発努力のおかげだが、ビールの中身だけでなく容器も進化していることにお気づきだろうか。

キリンは11月22日、国産最軽量(同社調べ)のアルミ缶を開発したと発表した。発表によれば、形状の工夫などによって薄肉化しながらも強度を確保し、350ml缶で約5%、500ml缶で約7%の軽量化を実現したという。今回、神奈川県横浜市にある同社のパッケージング技術研究所を訪ね、この新しいアルミ缶(以下、新型缶)について開発者の會田裕佑氏に話を聞いた。

キリン R&D本部 パッケージング技術研究所の會田裕佑氏。2010年入社。キリンビール千歳工場に配属後、2013年4月よりパッケージング技術研究所

アルミ缶の構成

新型缶の紹介に入る前に、アルミ缶の構造について説明しよう。アルミ缶は大きく分けて缶蓋と缶胴という2つのパーツで構成されている。缶蓋はプルタブが着いていて我々が口をつける部分、文字通り缶の蓋だ。缶胴は缶蓋を除いた、アルミ缶の胴体部分で、ビールの製造ラインではこの缶胴にビールを充填後、缶蓋を被せる。缶胴と缶蓋の縁はフック状になっており、巻き締め機(シーマー)という機械を使って、お互いの縁を巻き込んで締め付けることで密封する。今回の開発では、主に1)缶蓋、2)缶胴、3)巻き締め機の改良が行われた。

アルミ缶は缶蓋と缶胴。写真は新型缶

「強度を保ちながら薄肉化」を実現した方法とは?

まずはこちらの写真を見てほしい。左が従来のアルミ缶(現行缶)、右が新型缶の缶蓋だ。

何が変わったかわかるだろうか?

よく見ると、右の新型缶の外側には現行缶にはない段差が設けられている。これは、内圧で缶が膨張して変形してしまうのを抑えるためで、これにより強度を保ちながら缶蓋を6%薄くすることに成功した。また、液溜まりを防ぐために、パネルと呼ばれる点字が描かれている部分(下図参照)の面積や高さにも変更が加えられた。

新型缶と現行缶の違い。新型缶の缶蓋には段差がある(資料提供:キリン)

赤で示した部分がパネル

缶胴は現行缶に比べて約7%薄肉化した。會田氏によれば「縦の荷重に対する耐久性が基準以上になるように、(アルミの)厚さのバランスを設計している」とのこと。また、形状は変わっていないように見えるが「実は底の部分が少し変わっている」(會田氏)。その缶底を比べてみたのがこちらだ。

現行缶(左)と新型缶の底部分

新型缶は耐圧性能に優れた缶に用いている技術を導入し、現行缶に比べて地面に設置する部分(ここでは便宜的に"脚"とする)が内側に若干反っている。写真ではなかなか違いがわからないが、触るとわかるので新型缶を手に取る機会があったらぜひ"脚"を指でなぞってみてほしい。

現行缶(左)、新型缶それぞれの下部分を横から見たときのイメージ図。新型缶は"脚(赤で囲んだ部分)"が若干反っている(筆者作成)

なお、缶蓋と缶胴をくっつける巻き締め機に関しては、新しい缶蓋に対応できるよう関連部品を新規に開発したとのことだった。

キリンの挑戦は続く

新型缶は2009年から開発に着手。長期にわたる開発の中でメインの担当者も代わり、會田氏で3代目の開発担当者だという。同氏は前任者から研究を受け継ぎ、製缶メーカーのユニバーサル製缶と協力しながら苦節7年におよんだ新型缶の開発を完成させた。

新しい容器が市場に投入されるまでにはいくつもの試験をパスする必要がある。耐久性をテストする衝撃試験や振動試験に加え、"飲みやすさ"に焦点を当てた官能評価など定性的な試験も実施し、それらの基準をクリアして初めて消費者の手元に届けられるのだ。

キリンがここまで容器の軽量化に注力する理由としては、環境への配慮が背景にある。キリングループでは、2050年までにバリューチェーン全体のCO2排出量を1990年比で50%削減することを目指している。新型缶を最大限に導入した場合、製造工程で排出されるCO2を年間約2万9600t削減できる見込みだ(キリンの試算による)。また、展開規模によるため詳しくは明かされなかったが、原料・資材コスト面でも数億規模での効果を見込んでいるという。

海外では今回の新型缶よりも軽いアルミ缶が存在し、今後も軽量化に向けた研究開発は進めていくとのこと。もちろん、コスト面でメリットがあるからといって単純な薄肉化を進めるわけではない。會田氏は「漏れないこと、飲む時にちゃんと開くこと。つまり容器としての機能に悪影響が無いように開発を続ける」と語り、あくまで消費者が使いやすい容器を作っていくとした。

とにかく試行錯誤を繰り返したという會田氏

新型缶はキリンビール神戸工場から導入を開始し、2016年11月下旬から順次、ビールや発泡酒などの容器で展開を開始している。年末年始、テレビの前でキリンの缶ビールを飲むときには味だけでなく、同社の技術とこだわりが込められた"缶"にも注目してほしい。



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