猫はなぜ液状おやつが大好きなの?

ここ数年でよく見られるようになった液状タイプの猫用おやつ。全国の猫から高いリピート率を獲得し、あっという間に大人気商品になりました。体調が悪い時でも液状おやつだけは食べる、液状おやつを出したら猫と仲良くなれた、など液状おやつに関するエピソードは尽きません。今回は液状おやつが猫に大ウケしている理由について考えてみましょう。

成分や原材料は普通

成分を見てみると、液状なのでその90%以上が水分、そしてタンパク質が6~7%、残りを脂肪や灰分(ミネラル)が占めています。原材料は味によって異なりますが、鶏肉やマグロ、カツオなどをメインにホタテエキスが加えられており、特に他の猫用おやつと大きな違いはありません。

猫ウケの理由はやはり新しい食感

猫は、「ネオフィリア」といってこれまで経験したことのない食餌を好む性質が強くあります。液状おやつというジャンルは今まで猫界にありませんでした。つまり年齢を問わず猫にとって新鮮だったのでしょう。ドライフードやウェットフードを食べている猫からすると、おやつは食感が違うものの方が魅力的なのかもしれません。

液状にすることで香りがより広がるか

猫が夢中になる姿を見るとさぞかしおいしいんだろうなと感じますが、猫は舌にある味を感じる味蕾(みらい)という器官の数が人や犬よりはるかに少なく、味覚の感度は低いと考えられています。

一方で嗅覚が食欲に与える影響は大きく、身体は健康であっても鼻が詰まってしまうと何も口にしない猫もいるほどです。ウェットフードでもスープだけ舐(な)める猫がいるように、液状おやつは香りを強く出すのにとても有利なのが効いているかもしれません。

最後に

今までになかった液状のおやつは、「何か変なものが入っているのではないか?」と質問されることがあるほど人気です。その秘密は新しい食感と強い香りによるものだと思います。

また、「ペロペロと食べる姿がかわいい」というのもヒットした理由の1つではないでしょうか。入院中の猫の中でも、液状おやつだけは食べるという猫もいるので、これを応用して食欲がない猫のエネルギー補助食や嗜好(しこう)性が高い腎臓病の療法食などが開発されないかな、と期待しています。

著者プロフィール: 山本宗伸

獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。