一方、もともと携帯電話用に開発され、現在ではセルラーによるM2M技術でもサポートされている、無線ファームウェア・アップグレード(FOTA:Firmware On-the-air)機能を使えば、キャリア・ネットワークを介して効率的にモジュールのファームウェアを更新することができます。

これらのメリットにより、セルラー技術は大規模な展開が進んでおり、メーター・システムにおいては、エンドツーエンドのネットワークを提供しています。住宅および商業ネットワークの大部分では2G汎用パケット無線サービス(GPRS)ソリューションを使用して展開されており、産業用スマートメーターは主に3G技術に基づいています。

事業者が近距離無線プロトコル(ワイヤレスM.Bus 169MHzや自社技術の低消費電力広域無線技術など)をベースとしたポイント・ツー・マルチポイント・ソリューションを導入した場合でも、ローカルのHANにあるデータ収集機から、事業者のデータ管理システムへ接続する際には、セルラー通信が使用されます。

また、セルラー通信は、スマートメーター・ゲートウェイと呼ばれるスマートメーターの通信ハブにも採用されています。これは、AMIの形態の1つで、住宅や商業ビル、マンションの電気メーターまたは独立したゲートウェイ機器と、事業者のバックホールMDMにセルラー通信を介して接続することができ、多くの欧州諸国や日本で展開または計画されている技術です。ゲートウェイ機器は、ISMワイヤレスRF(欧州のW.Mbus 868、日本のWi-Sun 920Mhz、およびZigbee)経由で、家庭内の他のメーターやシステムとの接続に使用されます。

コスト効率が高く、データの転送速度も十分なため、世界中のスマートメーターには2Gおよび3G接続が一般的に使用されてきました。しかし、将来の展開を見据え、事業者のエコシステムはすでに4G LTE接続に移行中です。この移行は2つの要因によるものです。第一の要因は、LTE技術によって提供される製品およびインフラストラクチャの運用期間の長期化です。第二の要因は、AMI向けに帯域幅、遅延および消費電力性能が最適化された、Cat 1、Cat M1、NB-IoTといった新しいLTEの仕様の登場です。

まとめ

実証済みのセルラー通信用モジュールがあれば、製品化までの期間を短縮し、メーター市場における革新的なソリューションを生み出すことが可能になります。LTE Cat 1、Cat M1、NB-IoTは、今後さらにエキサイティングな展開を遂げるでしょう。スマートメーターも同時に進化し、複数の新しいカテゴリのスマートIoTセンサ間で効率的なワイヤレス接続ができるようになるでしょう。これにより事業者は、従来のインフラコストやタイムラインと比較し、より低コストで、より早いペースで新しいビジネスモデルの実証実験ができるようになります。

u-bloxでも、ガス・水道およびスタンドアロン型の電気メーター機器に使用する2G対応モジュールや3G対応モジュール、スマートゲートウェイシステム向けのCat 1/Cat M1対応モジュールといった、スマートメーター・システムをグローバルに実現するセルラー・モジュールの提供を進めてきました。こうしたモジュールは、過酷な温度/湿度/振動のある環境下での動作など、産業用途で必要とされる堅牢性を満たすATEX認定セルラー製品やISO16785に基づいた製造なども提供するなど、高い品質と信頼性の実現に取り組んできたほか、NB-IoTといった先端技術への対応も進めることで、スマートメーターのネットワークやグリッドの設計・運用・保守の簡素化、ならびにスマートメーター導入のTCO削減などへの貢献を目指しています。

著者紹介

Diego Grassi(ディエゴ・グラッシ)
u-bloxシニア・マーケットデベロプメント・マネージャー
2014年7月、u-blox入社。セルラー製品センターの製品戦略チームに所属し、産業・小売およびエンタープライズ市場の開発を担当する。
u-blox入社以前は、Micron、Numonyx、STMicroelectronicsなどの半導体企業で、製品マーケティング、ビジネス開発、戦略的マーケティングを歴任し、通信、民生用および産業用エレクトロニクスの分野において、ビジネス開発を担当したほか、エコシステムプログラムに携わった。
民生用エレクトロニクスを専門とし、情報経済学を中心とした学位を取得。