2016年は「VR元年」と言われ、エンタメのみならずビジネス用途まで、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使った映像体験が注目される一年となった。
そんな折、12月16日に、VRを体験できる常設アミューズメント施設「VR PARK TOKYO」がオープンした。これは、グリーとアドアーズが提携し、アーケード業界のあらたな業態としてのVR体験を目指したものだ。
携帯端末ゲームで知られるグリーだが、2015年からVR向けタイトル専門スタジオ「GREE VR Studio」を立ち上げて開発を行っており、今回のアドアーズとの提携はその活動の一環だ。コンテンツ開発だけでなく、施設の開設へと乗り出した理由は何だったのだろうか?
そこで今回はグリー Wright Flyer Studios事業本部 NT Production部 副部長の江本真一氏に、同社のVRに対する取り組みについて伺った。
――まず、GREE VR Studioを開設されたきっかけについて教えてください。
取締役 執行役員の荒木(英士)が、次のプラットフォームはVRが来るのではないか、と考えたのが一番のきっかけです。なぜそう考えたかというと、ソニーのVRヘッドセット「Project Morpheus」(※開発コードネーム、現在のPS VR)を実際に触ってみて、それに可能性を感じたということです。
GREE VR Studioは、「東京ゲームショウ2015」に参考出展したOculus Rift向けの「サラと毒蛇の王冠」、iOSおよびAndroid版「シドニーとあやつり王の墓」、Gear VR版「Tomb of the Golems」などをこれまでに開発・提供してきた |
――GREE VR Studioのコンテンツ開発環境について教えてください。
ゲームエンジンはUnity、ヘッドマウントディスプレイはHTC Viveが40台強、Oculus Riftが10台強、そのほかにもPS VR、Gear VRなどを所有しています。
――VR産業にかかわるプレイヤーの方を集めたカンファレンス「Japan VR Summit」をすでに2度開かれています。コンテンツのリリースだけでなく、こうした場を主催する狙いは?
まず、米国と比較して投資の温度感が低いというのが大きな課題なんです。産業として成長する前に、そもそもそこに資金が投入されるのか。また、そうされたとしても、そこにデベロッパーが出てくるのかという懸念があります。
いま大切なのは市場の立ち上がりを形成することなので、そこをグリーとして牽引していこうということでこうしたイベントを開催しています。
――今回、これまで東京ゲームショウで発表してきたVRコンテンツではなく、アーケード施設「VR PARK TOKYO」を開設し、そこで新作コンテンツをリリースする理由は何ですか?
先ほどのお話と重複する部分もあるのですが、とにかく市場を立ち上げて拡大していく必要があると思っています。また、ヘッドマウントディスプレイのメーカー各社の出荷台数は当初の想定ほどには届いていないようです。
こうした状況下で一般の人たちに向けてVRコンテンツを届けるにはどうしたらいいかと考えた時、ロケーションベースのVR、つまり常設のVR体験施設を活用したらいいのではないかという発想になりました。
市場を確立するためには、とにかくVRに触れてもらう機会を増やすしかないと思っています。そういった意味では、日本にはアーケード施設が数多くあるので、VR市場を拡大するという意味では優位なのではないでしょうか。