富士通は同社が開発・体系化したAIソリューション「Zinrai」を中心としたサービス5種を開発し、順次販売を開始する。大小様々な規模の企業がAIに参入してきた中、富士通の参入は後発にあたる。富士通のAIビジネスに勝機はあるのだろうか。

「Human Centric AI」と銘打って同社が研究・開発・体系化を進めてきたAI製品を「Zinrai」と呼ぶ

富士通におけるAIビジネスの位置付けとは

富士通は2015年11月に「Human Centric AI」と銘打って同社が研究・開発・体系化を進めてきたAI製品を「Zinrai」と名付け、発表した。富士通とAIとはあまり縁がないように思えるが、同社は1980年代から30年以上にわたって同社の研究機関である富士通研究所で人工知能に関する研究開発を進めており、そこから生まれたセンシング技術、知覚・認識(画像処理、音声処理、状況認識など)、知識化(自然言語処理、パターン発見など)、判断・支援といった技術の総称を「Zinrai」とブランド化したものだ。

富士通は同社の新しいビジネスモデルとして「つながるサービス」を挙げ、AI、IoT、クラウド、セキュリティの各分野への集中投資を行うとしており、Zinraiはこの中核を担う存在となる

販売開始がアナウンスされた5つのサービスは「Zinraiプラットフォームサービス」「Zinraiディープラーニング」「Zinrai活用コンサルティングサービス」「ZInrai導入サービス」「Zinrai運用サービス」の5種類。「Zinraiプラットフォームサービス」はAI機能の中でも特にニーズが高く実用性も高いものをピックアップし、基本API21種、目的別API9種の合計30種を提供するというもの。たとえば画像認識や音声のテキスト化といった機能を素早く使いたい場合には、0から開発せずとも、このプラットフォームサービスを導入すればいいわけだ。

AIを使ったサービスそのものがZinraiプラットフォームサービスとなる。当初は30種類のAPIが提供されるが、これは将来的に拡張される予定

「Zinraiディープラーニング」は、Zinraiプラットフォームサービスの土台となるハードウェアおよびソフトウェア技術の総称で、NVIDIAのTesla P100ベースのハードウェアに、富士通が得意とし、スーパーコンピュータの開発で築き上げてきた並列処理技術をベースとする高速ディープラーニング処理を組み合わせることで、世界最速クラスを謳う学習システムを提供するもの。これと前述したZinraiプラットフォームサービスのAPIを組み合わせて利用するのが基本セットと言っていいだろう。

そしてAIの導入経験が浅い企業などに対し、富士通のAI専任コンサルタントが経営課題やニーズから最適なAI活用シナリオを導き出す「Zinrai活用コンサルティングサービス」、AIシステムの設計および構築を支援する「Zinrai導入サービス」、AI導入後の学習モデルのメンテナンスを行う「Zinrai運用サービス」の3種類が用意される。ソフトウェア開発の基盤からハードウェア、そして実際の運用やメンテナンスまで、幅広いニーズに応えられるのがZinraiの強みと言えるだろう。