英国ロンドンは、非接触決済の普及が著しい土地とされている。クレジットカードなどで決済端末にタッチするだけで支払いができる「コンタクトレス」がさまざまな場所で利用可能になっている。今回、ロンドンの決済事情をチェックしてみた。

ロンドンといえばビッグベン

こちらはロンドン橋の夜景

非接触決済を、英語では「Contactless」(コンタクトレス)というが、あまり通じる国は多くはない印象。ただ、英国では「支払いはコンタクトレスで」と言うと理解してもらえることがほとんどだったので、それだけ使われているということだろう。

使われているのはNFC Type-A/B方式。たいていはクレジットカードやデビットカードでタッチするが、スマートフォンを使った決済も使われ始めているようだ。この辺りはやはりApple Payの登場が大きいのだろう。ロンドン・ヒースロー空港にはプリペイドSIMの自動販売機があるが、ここでもApple Payのロゴがアピールされていた。

ヒースロー空港のSIM自販機。Apple Payのロゴがある

横向きの無線LANのようなマークが非接触決済(コンタクトレス)のロゴ。このロゴがあれば、Apple Pay、Android Pay、iD/NFCなどが利用できる

しかし、海外におけるApple Payは、日本人にとっては使いづらい。最近国内でもスタートしたAndroid Payも同様だが、日本版Apple Payは、iPhone 7シリーズでFeliCaに対応したおかげでNFC Type-A/Bサービスとの互換性が失われてしまっている。日本のiPhone 7シリーズにクレジットカードを登録しても、FeliCa側でしか利用できないため、海外のNFC Type-A/Bサービスでは使えないのだ。米国などの銀行が発行したクレジットカードやデビットカードを持っていれば、それをNFC Type-A/Bサービス用に登録できるが、あまり現実的ではない。

そのため、日本人であれば国内のAndroidスマートフォンでiD/NFCやMasterCardコンタクトレスなどのNFC Type-A/B対応サービスを使うのが最も簡単だ。すでにNTTドコモやMVNOのスマートフォンでiDを設定している人であれば、iD/NFCを海外利用設定すれば、そのまま海外に持ち出してスマートフォンで決済ができる。

iPhoneも、同様にNFC Type-A/B側にクレジットカードが登録できればいいのだが、iPhone 7シリーズでは、あいにくFeliCaと分離してしまったため、同じことはできない。日本ではおサイフケータイでモバイルSuicaの電子マネーやiDなどのクレジットカードを使い、海外ではiD/NFCなどのクレジットカードでコンタクトレスを使う、というやり方は、実はFeliCaとNFC Type-A/Bを共存させている国内のAndroidスマートフォンしかできないワザなのだ。

さて、ロンドンである。ロンドンの非接触決済は、NFC Type-A/Bを使った「Oysterカード」がもともと普及していた。これはロンドン交通局(TfL)が運営する地下鉄、バスなどの公共交通用の非接触決済システムだ。日本のSuicaなどと同等と考えていい。

コンタクトレスの普及は、このOysterカードの普及と無関係ではないだろう。カードでタッチするだけで支払える利便性に慣れていると、普段の支払いでも同様の仕組みにすぐに慣れる。クレジットカードやデビットカードがコンタクトレスに対応すれば、普段はそれで使おうという人も多い。ロンドン五輪以降の決済端末側の入れ替えなどで非接触対応端末も増えたようで、使える場所が広がったのも大きいだろう。