「視界に何か浮遊物が見える……」というときは飛蚊症の症状が出ている可能性がある

「飛蚊症」(ひぶんしょう)という言葉をご存じだろうか。一般的に、自分の視界の中に細長い浮遊物らきし物が見えることを指すこの症状は、網膜はく離などの重篤な疾患につながる可能性もあるがその大半は放置しておいても問題ない。

本稿では、あまきクリニック院長の味木幸医師の解説をもとに飛蚊症の症状や原因などを紹介する。

飛蚊症の見え方は人により異なる

何かを見ている際、細長い黒い物体のようなものが動いて見える状態のことを一般的に飛蚊症と呼ぶ。暗い場所だと見えないが、真っ白な原稿用紙や秋晴れのように透き通った空を見ると現れるのが一般的とされている。

視界の中の浮遊物は、視線を動かした際にやや遅れて現れる特徴がある。これらの物体はあたかも蚊や虫が飛んでいるように見えることもあるが、味木医師は人によってこの浮遊物の見え方に個人差があると話す。

「見えるものには実際にさまざまな形があって、蚊とか虫ではなくて『ひもみたいなんですよ』とか『泡粒みたいなんです』とか表現される患者さんもいますし、色も黒に限らず白とか赤という患者さんもいます。それらを総称して飛蚊症と呼びますね」。

飛蚊症の原因は大きく分けて「生理的原因(加齢含む)」と「病的原因」がある。網膜組織が裂けてしまう「網膜裂孔(れっこう)」や、失明につながる恐れもある「網膜はく離」が病的原因の一例だが、8割程度が生理的原因だという。

この生理的飛蚊症は、目の構造が原因となって起こりうる症状だ。私たちの目の中は硝子体(しょうしたい)と呼ばれるゼリー状の物質で満たされているが、硝子体は経年劣化する。加齢とともに硝子体に濁りが出てきて、その濁りが網膜に影を落とし、あたかも目の前に浮遊物が漂っているように見えるのが生理的飛蚊症のメカニズムだ。

「生理的飛蚊症は目の中の老化が原因になってくるため、40代や50代の方に多くみられます。ただ、個人差もあり近視が強い方では20代で出る場合もあります」と味木医師は話す。