大きくなった今、トトロは実在するのかどうかなんて、検証しようがない。だって、"子どもの時にだけ"訪れる出会いなのだから。……と思っていた人のためにも、白髭さんはいる。すてきな出会いどころではない。おいしい出会いがそこで待っている。

トトロがものすごくこっちを見ている

シュークリーム一筋で8年半

そんな、白髭さんのお宅は小田急電鉄小田急線・京王電鉄井の頭線「下北沢駅」から徒歩7分。お宅の名は「白髭シュークリーム工房」である。住宅街の中にこっそりと、大きなモミの木の下で3匹並んだトトロの看板がお出迎えしてくれる。

住宅街の中にこっそりと

2008年にオープンした当初は杉並区高井戸に工房を構えていたようだが、2013年に現在の世田谷区代田にお引越し。月日を経て、トトロの看板にやや劣化が見られたようで、このほど、いい風合いを保ったまま補修されたとのこと。その際、むんずとよじ登るメイちゃんも加わった。

2016年10月からメイちゃんも看板娘に

白髭シュークリーム工房の名の通り、工房のメインキャストはシュークリームだ。先の写真でお分かりだと思うが、このシュークリームこそがトトロの正体。ふっくらとした姿、絶妙な目、つんとした鼻、ちょこんと載せた帽子や葉っぱや花。拍手を送りたいほどの黄金比である。トトロのシュークリームはこの工房だけが作ることができ、もちろん、販売もここだけ。過去には海外で販売されている日本ガイドでも紹介されたことがあるようで、近年では外国人の客も増えているという。

「白髭シュークリーム工房」の中。ショーケースの中にたくさんいるのがトトロたちだ

全8種類、クリスマス限定の2種類も

実はこのトトロたち、おのおの自由に帽子や葉っぱや花を載せているのではない。それぞれ味わいが違うのだ。オールシーズン工房で待っているのは、葉っぱを載せたカスタードクリーム(400円)と、水色の帽子を載せたチョコレートクリーム(400円)。1~6月は花を載せたストロベリークリーム(440円)、1~4月は黄色い帽子を載せたキャラメルバナナクリーム(440円)、5~8月は黄色い帽子を載せた抹茶クリーム(440円)、7~9月頃は桃色の帽子を載せたピーチクリーム(440円)、9~12月は黄色い帽子を載せた木苺&クリームチーズ(440円)、10~12月は葉っぱを載せたマロンクリーム(440円)となる。

12月はカスタードクリームとチョコレートクリーム、木苺&クリームチーズ、マロンクリーム。ただいまこしょこしょ話中

そして、12月23~25日の3日間は、限定バージョンのトトロが登場。キラキラ光るヒイラギの葉っぱを載せてクリスマスを祝ってくれる。なお、この3日間は他のトトロはお休みとなり、カスタードクリームとストロベリークリームのみがこのクリスマス仕様として工房で待っている。

クリスマスにはこの子たちがお出迎え

材料にもこだわりがぎっしり

もちろん、その魅力はかわいさだけではない。パリッと香ばしいシュー皮には、北海道産や石川県産の有機栽培による小麦粉を使用。生クリームやバターも北海道産であり、季節で変わるフルーツベースのクリームも、苺は和歌山県産、桃は山梨県産、栗は熊本県産と、可能な限り材料は国産品を用いることにこだわっている。

焼き上げられたばかり。ちょっと小休止

トトロに申し訳ないが、ちょっと中を見させていただいた。失敬したのは黄色い帽子を載せた木苺&クリームチーズで、サックサックのシュー生地の中には奥までしっかりクリームが詰まっていた。クリームチーズに木苺のジャムを合わせたこのクリームは、酸味も風味もしっかり。甘すぎない濃厚仕上げで、見た目にも負けず劣らず癒やし度が高い。

ごめんなさい!!

奥までクリームがぎっしり

これらのトトロはどのように作られているのか、社長の宮崎恭子さんにおうかがいしたところ、特許を取得した鋳型を用いているとのこと。シュー生地もクリームの量も一つひとつていねいに計り、一つひとつ手作業であの絶妙な表情が生み出されていく。

特許を取得した鋳型で量産。オーブンで使う手袋にもトトロ

ていねいに命を吹き込む

クリームが入るまで、ここで小休止

多い時には1日600匹も販売されているようで、早い時には15~16時に売り切れになることも。クリスマス限定商品も含めて電話予約を受け付けているので、確実に手に入れたい人は予約を検討していただきたい。なお、シュークリームは生菓子のため、その日の内に食べるようにしよう。

ショーケースでスタンバイ

"森のおみやげ"にもストーリーが

そしてもうひとつ、工房にはトトロをイメージしたスイーツがある。「トトロに会ったら、こんなお土産をくれるかも」というところから開発された"森のおみやげ"のクッキー(ひとつ140~220円)だ。現在はドングリや葉っぱ、フクロウ、キノコ、クローバーなど全7種類あり、眺めている端からストーリーが始まりそうな予感。これらのクッキーは、クリスマスや正月、バレンタインデー、ホワイトデーなどとイベントに合わせたラッピングバージョンも展開される。1個から買えるんで、ちょっとしたお土産にもぴったりだ。

"森のおみやげ"クッキーは現在、全部で7種類ある(ひとつ140~220円)

クリスマスバージョンも登場

店内はジブリファンならずとも、テンションが上がるアイテムがあっちにもこっちにも。工房の隅っこには白髭さんが隠れているので、ぜひ探していただきたい。ちなみに、工房とは別経営となるが、工房の2階にはカフェがある。工房で購入したシュークリームは2階のカフェに持ち込むこともできるので、今すぐトトロとおいしい時間を過ごしたい人は、カフェを利用するといいだろう。きっと、思っていた以上に癒やされるひと時になるはずだ。

白髭さん

釜爺も食べたいそうです

information
白髭シュークリーム工房
所在地: 東京都世田谷区代田5-3-1
アクセス: 小田急電鉄小田急線・京王電鉄井の頭線「下北沢駅」から徒歩7分、小田急電鉄小田急線「世田谷代田駅」から徒歩3分
営業時間: 10:30~19:00
定休日: 火曜日

※記事中の価格は全て税込