毎年のノーベル賞週間行事にあわせて、科学者を目指す世界各国の若者を対象に「ストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS)」が、スウェーデン青年科学者連盟の主催で開催されている。

今年は世界17カ国から24名の若者が同セミナーに参加。日本からは、国際科学技術財団の審査により選ばれた京都大学大学院薬学研究科 博士前期課程の松本明宏氏、香川高等専門学校 専攻科 電子情報通信工学専攻の春日貴章氏の2名が、12月4日~12日の9日間、ストックホルムに派遣された。

同セミナーの参加者たちは、現地の高校生を前に英語で各自の研究発表を行うほか、カロリンスカ研究所をはじめとするストックホルムの大学や企業を訪問。さらに、ノーベル賞受賞者記念講演会をはじめ、祝賀レセプション、授賞式、晩餐会など一連のノーベル賞週間行事に参加する。

京都大学大学院薬学研究科 松本明宏氏

12月14日に報道関係者に向けて開催された報告会で松本氏と春日氏は、同セミナーを終えての感想を語った。

大学院でがん免疫療法のシステムについて研究を行っている松本氏は、「科学は人と繋がるためのツールになるということを感じた。南アフリカやロシア、シンガポールなど、その国の事情も知らない参加者たちと、どういったトピックで関わっていけばよいのか悩んだが、皆、科学が好きだということは共通。研究内容や研究の意義などについての話題を通して仲を深めることができ、芸術や音楽だけでなく科学も文化のひとつであるということを実感した」と振り返った。

香川高等専門学校専攻科 春日貴章氏

また、放射線について学ぶことができるARゲーム教材を開発している春日氏は、他国からの参加者との交流を通して、「参加者のなかでは年長者だったが、他国の人たちは、若いながらも自身の活動や研究に誇りを持っており、人間として自立していると感じた。自分はこれまで学生であるという意識が強かったが、彼らは学生ではなく、いち科学者としての意識を持っている」ことに気づいたという。春日氏は来年から分野を変え、材料科学系の研究室へと進学することが決まっており、「今後は、自分もそういった意識を持って研究に取り組んでいきたい」と語った。

また両氏はセミナー期間中に、ノーベル生理学・医学賞の受賞者である東京工業大学 大隅良典栄誉教授と交流する機会もあったという。大隅栄誉教授の印象について会場の記者から問われると、「用意していた質問に対して、気さくに応じてくださった。また、授賞式でほかの受賞者のスピーチを姿勢を正してしっかり聞こうとされていたのが印象的。真摯な方だと思った」(春日氏)、「自身の研究について、たくさんのコラボレーターの名前を出しながら紹介されていた。人を大切にされている方だと感じた」(松本氏)と話していた。

両氏は今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者 東京工業大学 大隅栄誉教授と交流する機会もあったという(画像提供:国際科学技術財団)