加えて梅酒ヌーボーには、新たな食シーンにつなげられるポテンシャルがあるだろう。例えば冒頭でも紹介したように解禁日は12月第1金曜日だが、12月といえばクリスマスや忘年会、年末年始が控えており、ホームパーティーも多い。そういった季節柄と新酒であるなどから話題を呼べること。黄金色と縁起が良い色合いであることで、食卓や宴席に上がる機会が多くなるのではなかろうか。

また、クセのないスッキリとした味わいから、これまでの梅酒と違った飲み方がされそうだ。中野BC製造部の山本佳昭部長は「梅酒は食前酒ということで認知されていると思うが、食中でも飲めるものとなっている」と話す。濃厚なコクがあって甘酸っぱい梅酒は食前や食後の1杯、帰宅後の1杯というイメージだが、梅酒ヌーボーならそのまま食事に組み込むことができ、新たな梅酒需要につなげられる。

ワインも日本酒も新酒がある中、これまで梅酒は熟成した古酒のみが出荷されていた。成熟した梅酒市場における成長の余地は、実は今までありそうでなかった新酒にあったのだ。

明利酒類の梅酒ヌーボー「百年梅酒 春花」。白加賀と呼ばれる品種の梅を使い、ビター感や酸味が出たものになっている

梅酒業界の新星として期待される梅酒ヌーボーだが、現在梅酒研究会が掲げる定義に基づいて製造しているメーカーは中野BCと明利酒類の2社のみ。梅酒研究会の金谷専務理事は参加企業に関し「来年にむけて約20社をメドに進めていきたい」と話す。

現時点の認知度は、まだ途上にあるものの、話題性はもちろん、これまでにない食シーンやターゲットの可能性を考えると、梅酒業界ひいてはアルコール飲料業界の新たなトレンドになりえる要素は十分にある。現時点で2社のみでも、今後参入企業が増えていけば、新梅酒の解禁が消費者をにぎわせる日が来るかもしれない。