今年のヌーボーに使用した梅は、生育期間が短かったため小粒ではあったものの、その分、梅の成分が凝縮されたため、香り高い梅酒になっているという。

中野BCは、ワインのボージョレ・ヌーボーのように、梅酒にも年に一度注目される機会を創出したいということで、6年前から梅酒ヌーボーを販売。現在の販売規模は量販店100店舗以上となっている。

明利酒類も中野BCの働きかけで、去年から販売するようになり、今年は同社の地元である茨城県の大手コンビニエンスストアでの取り扱いが決定した。明利酒類の加藤高藏社長は「熟成した梅酒とはまた違って、香りがすごく若々しい。これは市場に出して消費者の皆さんに喜んでいただけるものだろうと確信した」と話す。

成熟する梅酒の市場

もともと梅酒市場は、2003年から梅酒ブームが始まって、2011年まで移出数量が大幅に伸び、現在では、2000年の2倍の市場規模にまで成長した。その要因のひとつとして、梅酒が和のリキュールとして消費者に見直されたことがあげられる。また、消費者の視点に立ってみると、梅酒に、“健康的で親しみやすい”というポジティブなイメージがあったことも大きいのではないだろうか。

梅酒移出数量のグラフ。2011年がピークとなっている

しかし、2011年以降の移出数量を見ると、現在はブームを過ぎて安定傾向となっている。現在は量から質の時代に移り、消費者は味や原料にこだわる本物志向に移行。一方で柑橘類やブランデーなどをブレンドしたもの、日本酒に漬けたもの、梅の実を溶かし込んだにごりタイプの梅酒などが販売され、多様化が進む。

また、梅酒を増やす飲食店や梅酒の漬け込みセミナーも増加するなど、梅酒業界自体が成熟したものとなりつつある。そんな中、市場に求められる次の一手は新たな価値を持った商品だ。

梅酒ヌーボーが持つ梅酒市場成長のポテンシャル

そこで梅酒市場において注目されるのが、梅酒ヌーボーである。

ターゲットについて梅酒研究会の専務理事で日本梅酒協会代表理事の金谷優氏は「お酒のあまり強くない方、もちろん梅酒というのを新酒で飲んだことがない方」と見ている。また、中野BCの中野幸治社長は「熟成したものはそう飲めないが、梅酒ヌーボーなら梅酒が飲めない人も若い人も飲みやすい」と。梅酒ヌーボーの香り高さや新規性は消費者に新たなユーザー体験を提供できるのに加え、口当たりが軽くて飲みやすい点は今まで梅酒を飲まなかった新たな層を獲得できるかもしれない。