2016年12月7日(米国日時)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14986を、ファーストリングを選択したPC向けにリリースした。Cortanaの機能強化やゲームバーのフルスクリーンサポート改善、Windows InkのUX向上が加わっている。

Cortanaを核とした多数の機能改善が加わった

前回のOSビルド 14977はモバイル向けとなるWindows 10 Mobile Insider Previewのみだが、今回はその穴を埋めるかのようにPC版のみリリースした。今回の変更で顕著なのがCortanaである。音声によるPCのシャットダウンやスリープ、ボリューム変更を可能にした。また、好みの音楽再生アプリケーションを使って、アーティストやラジオ局といった音声制御を可能にしている。もっとも、これらの機能は英語環境に限られるらしく、日本語で「Cortanaさん、シャットダウン」と話しかけても対応してくれなかった。

現時点で日本語版Cortanaによる音声制御周りの機能拡充は利用できなかった

また、アイドル状態でCortanaに話しかけると、デスクトップ画面の明度が下がり、そのままCortanaがフルスクリーンで質問に応答する機能が加わっている。これまではCortanaのフライアウトが起動する仕組みだっただけに、新たなUX(ユーザー体験)として面白い。だが、何度か試してみると必ずしもフルスクリーンに切り替わらず、フライアウトが現れることもあった。また、Cortanaには、Microsoft Azure AD(Active Directory)のサポートや中国語への対応も新たに加わっている。

新UXとて新たに実装したCortanaのフルスクリーンモード

実際に試せなかった新機能としては、本OSビルド 14986がAzure ADに参加した際に、企業内のプリンターを探す「Search for Cloud Printers」が「設定」の<デバイス/プリンターとスキャナー>に加わっている。Microsoftの説明よればバックエンドサービスの稼働が必要なため、現時点では利用できないという。

Azure AD参加時に利用できる「Search for Cloud Printers」

「ゲームバー」がPCゲームをフルスクリーン表示時に利用できるのも本ビルドの新たな特徴だ。Microsoftは利用者からの苦情で多いのが本機能だと説明し、Windows 10 バージョン1607では、「Diablo III」などの6タイトルをサポートしている。そして今回新たに「Civilization V」などの19タイトルを追加した。筆者はフルスクリーンモードではなく、ウィンドウモードでPCゲームをプレイすることが多いため、以前の状態を確認できないが、下図に示したようにフルスクリーンモードでゲームバーが起動することを確認した。

Diablo IIIをフルスクリーンモードで起動し、[Win]+[G]キーを押すと確かに「ゲームバー」が起動した

Windows Inkにもいくつかの新機能が加わっている。まず画面スケッチは手書きメモを作成した後にそのまま閉じると、編集結果が破棄されてしまったが、新たに以前の状態に戻す機能が追加された。次にインクのフライアウトを更新し、選択した色とサイズをひと目で確認できるプレビューを加え、[ESC]キーでフライアウトだけを閉じる仕様に変更している。以前は画面スケッチなどがそのまま閉じてしまったため、本機能を多用する利用者には有益な改善だ。この他にも定規の回転を細かく制御可能になり、ペン操作時のカーソルが非表示になるといったUIの改善も行われている。

画面スケッチに加わった<以前のスケッチを再開>ボタン

インクのフライアウトに加わったプレビュー機能

Microsoft Edgeには新たな拡張機能として「True Key」「Ebates Cash Back」「Read&Write for Microsoft Edge」の3つが加わった。まず、True KeyはマカフィーのID/パスワード管理アプリケーション。Ebates Cash Backは2,00店以上の店舗でクーポンやプロモーションコードをオンラインで管理するアプリケーション。Read&Write for Microsoft Edgeは文章の強調表示や音声読み上げ、翻訳など学習困難な利用者を補助するアプリケーションである。

マカフィー(インテル)の「True Key」

クーポンなどを管理する「Ebates Cash Back」

学習支援を行う「Read&Write for Microsoft Edge」

また、OSビルド 14986では、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションのレンダリング技術更新や「ナレーター」の改善なども加わっているが、興味深いのはUWPアプリケーション版「Windows Defender」の存在だ。Microsoftは開発中であり一部の機能が動作しないと説明し、従来のデスクトップアプリ版もそのまま残されている。実際に試してみるとローカルファイルのクイックスキャンなどは正常に動作しているため、今後デスクトップアプリ版の廃止と共にUWP版への移行が進むことだろう。

UWP版の「Windows Defender」

OSビルド 14986とは関係ないが、Microsoftは「Windows Defender Hub」もWindowsストアで公開中。最終的には統合されるのではないだろうか

「レジストリエディター」もわずかだが改善が加わっている。以前はツリーペインにカーソルがある場合、[Alt]+[↑]キーを押すと真上のキーに移動していたが、本ビルドからは親キーへ移動する仕組みに変更した。また、<表示>メニューに<Font>を追加し、キーや値などのフォントを変更できる。

Appletsキーを選択している状態で[Alt]+[↑]キーを押すと、AppHostキーではなくCurrentVersionキーに移動する

フォントを変更した状態。レジストリ編集の場面が多い利用者には、地味な変更だがありがたい

筆者はデバイスを用意していないため検証していないが、USB Audio Class 2.0ドライバーの完成度向上とデバイス互換性の問題を探るため、サードパーティ製ドライバーよりも優先度を高めたとMicrosoftは説明している。既知の問題として、同ドライバーはASIOのサポートせず、特定のアプリケーションでWASAPI排他モードが動作しないことを把握しているという。また、アジア圏のIMEにも改良が加わった。日本語MS-IMEでは、テキスト予測候補の削除機能を追加し、変換精度を向上させている。

対象となるテキスト予測候補にマウスオーバーすると現れる<×>ボタンから削除できる