シックな色調とエンボス加工が特徴的なこの紙、見たことがある人も多いのではないだろうか。
この紙の名前は「レザック 66」。レザック=レザー・ライクを縮めた名称で、仔牛の革のような質感と外観を持っており、卒業文集や大学の紀要、公的機関の冊子などの表紙に多く使われる。特種東海製紙が製造し、竹尾が販売している歴史あるファインペーパーだ。
現在、竹尾で開催中の「レザック&マーメイド ―凸と凹の系譜―」では、このおなじみの「レザック66」のみならず「レザック」シリーズ全般、および発売60周年を迎える「マーメイド」といった2ブランドの紙の歴史と用例が一覧できる。
「レザック66」が使われた理由
おそらく30代以上の人々にはなじみ深いであろう「レザック66」。なぜ、自治体や教育機関などで多用されていたのだろうか。当時を知る竹尾の取締役 寺本敬一氏に尋ねてみた。
「レザックは堅牢性が高いので、長く保管するものに適していたんですね。色のバリエーションが多かったことも重宝された一因です。報告書も卒業文集も、1年に一度制作するという点で定期刊行物と言えますが、並べた時に統一性がありながら色で識別できることも重要な要素になります」(寺本氏)
使う側からすれば、同じ種類の冊子を何冊も並べて保管する都合上、堅牢性と識別性が必要だった。では、竹尾などと直接やりとりする、「刷る」側の印刷所はどうだろうか。
「昔は中小規模の印刷所が町中に多くあり、そこで使われているオフセット印刷機は一色ないし二色が主流でした。そういったところで先述の自治体や学校の印刷物を刷っていましたから、質感がはっきりしていて、単色印刷でも体裁が整うレザックは使いやすかったと言えます。ですが、今は町の印刷所の多くは廃業されていますし、今も運営している印刷所であればフルカラーの印刷機を備えていますから、表紙もカラーで刷ってしまいたいわけです。なので、レザックに限った話ではなく、テクスチャーを備えたファインペーパーの需要自体が縮小している状況です」(寺本氏)