インターネット上の情報への「アクセスしやすさ」を意味する「Webアクセシビリティ」。Webを利用するすべての人が、年齢や身体的制約、利用環境等に関係なく、Webコンテンツを利用できることを表す言葉だ。

2016年4月1日から施行された「障害者差別解消法」にWebサイトのアクセシビリティ対応が含まれるなど、日本でも対応に向けた流れが出来つつある昨今ではあるが、すでにあるWebサービス、コンテンツにWebアクセシビリティ準拠の構成を持ち込むのは容易なことではない。

そんな中、日本のIT業界でも先陣を切ってWebアクセシビリティに取り組んでいるヤフー、サイボウズ、グリーの三社。今回は、各社の担当者3名に、これまでの取り組みの経緯や、推進するなかで見えてきた課題、そしてWebアクセシビリティの本質について語ってもらった。

左から、ヤフー・中野信氏、グリー・嘉久英貴氏、サイボウズ・小林大輔氏。ヤフーのコワーキングオフィス「LODGE」および同社オフィスにてお話を伺った

Webアクセシビリティ、社内での第一印象は?

――Webアクセシビリティ対応当初の反応について、3社それぞれのエピソードをお伺いしたいです。

ヤフー 中野氏: 着手時にネガティブな反応はなかったですね。会社概要のページなど限定的なところから始めたので、そこでハレーションが起きることはなかった、というのもあります。また、Webアクセシビリティは障害者、高齢者への配慮というのが一番目立ちやすい題目なので、反対よりは賛成に流れやすい性質は元々あると思います。

グリー 嘉久氏: Webアクセシビリティ絶対反対!って言う状況はあんまりないですよね(笑)

弊社の場合、コーポレートサイトのメンバーに、以前Webアクセシビリティ対応を手がけていた人間がいたんですね。僕ともうひとりいるのですが、マークアップエンジニアとしてその辺りの経験があったんです。なので、実働メンバーのバックグラウンドから見て自然に、当たり前のことをやるという流れで始められました。

サイボウズ 小林氏: 弊社の場合、社内の技術発表会で自分がWebアクセシビリティについて話したのが、初期の取り組みでした。弊社の考え方にも合っている内容ですので、それをやること自体に賛成してくれる人は多かったです。

一方で、僕自身が当時「障害者への対応」というWebアクセシビリティの一部分に注目していたせいもあるのですが、どこまでコストをかけるべきか、費用対効果はどうかといった懸念も出てきました。Webアクセシビリティへの対応は決してコストや利益と真っ向から相反するものではないですし、共感は得られやすかったのですが、懸念は残ったというかたちです。