日本マイクロソフトは12月2日、日本国内で自己完結型ホログラフィック・コンピュータ「HoloLens」のプレオーダーが開始された。今回、このHoloLensを体験する機会を得たので、その使い勝手などをお届けしよう。

自己完結型ホログラフィック・コンピュータ「HoloLens」

まずは「HoloLens」の基本操作を確認

実際に体験する前に、まずはHoloLensの基本操作に関する解説があった。ご存じの方も多いと思うがあらためて紹介しておくと、HoloLensの基本操作は目線、ジェスチャー、音声認識により行う。

ジャスチャーの方法は、手のひらを上にした状態で握りこぶしを作り、花が咲くように手を開く「ブルーム(Bloom)」、上向きに立てた人差し指を折り曲げる「エアタップ(Air Tap)」、エアタップの状態から人さし指と親指でつまむような動作をする「タップアンドホールド(Tap and Hold)」の3種類だ。例えば、アイコンを操作する場合、目線でアイコン上にカーソルを移動してエアタップ、ホログラムのサイズ変更をする際はウィンドウの端をドラッグ&ドロップの要領でタップアンドホールドする、といった具合だ。

基本操作の説明が終わったところで、いよいよHoloLensの体験がスタートした。装着にあたっては、HoloLensを頭の上部から乗せ、前方に表示された枠の四隅がすべて視界に入るよう位置と角度を調整しながら、後部のダイヤルを締め込むと固定される。装着時の注意点としては、前髪が前方にあるレンズを遮らないように整えること。なお、眼鏡をかけている状態でも問題なく装着が可能で、左右で大きく視力差がある場合でも通常の景色と同じようにホログラムを見ることができるそうだ。

ビジネスに役立つガジェットや実物大ジェットエンジンを体感

装着が完了したところで、体験用のデモンストレーションがスタート。辺りを見回すと、現実世界では何もなかった机の周囲にWebサイトが表示されたブラウザやSNSのガジェットなどが浮かんで見えた。視線や顔を動かしてもホログラムがブレることはなく、まるでそこに実物があるかのように感じられる。一般的なVRゴーグルと違い、自分の手や周囲の景色とホログラムが一緒に見えているのは、不思議な光景ながら違和感は少ない。

なお、HoloLensでは自分の目線を中心にある程度ホログラムの表示範囲が絞りこまれているため、視野の端になると消えたり欠けたりするが、これは現実世界との差別化を図って安全性を上げる上でも重要な点だという。ここではいくつかのガジェットに対して、動画再生やウィンドウサイズ変更などの操作を行うことができた。

写真には当然、何も写っていないが、机の周囲にはWebサイトが表示されたブラウザやSNSのガジェットが浮かんでいる

さらにデモンストレーションは続き、日本航空(JAL)がHoloLensを使い開発している整備士訓練生向けトレーニングツールの一部を体感することができた。

目の前に浮かんだJALのブランドロゴをエアタップすると、それまで何もなかった空間にジェットエンジンのホログラムが出現。さらに、ジェットエンジンをエアタップすることで、パーツの一部である燃料フィルターが表示された。これらのホログラムは360度どの方向からも眺められる立体的な作りになっており、製品の構造を理解したり、デザインしたりするような仕事では便利だ。

続いてエアタップすると、先ほど目の前にあったミニチュアサイズのジェットエンジンが、今度はなんと前方に実物大で登場。ホログラムの作りが精細なため、かなりの迫力が感じられた。また、ジェットエンジンが置いてある周囲の地面には黄色い斜線が引かれており、整備士が立ち入り禁止エリアを意識するのに役立つのだという。

各種ジェスチャーは、ある程度高い位置で行ったほうが認識されやすい

法人・開発者向けの提供でエコシステムを構築

体験会の後半では、米マイクロソフト Windows&デバイスグループ ビジネス戦略担当ディレクターのベン・リード氏に、HoloLens関連の話を聞くことができた。

米マイクロソフト Windows&デバイスグループ ビジネス戦略担当ディレクター ベン・リード氏

リード氏は、一般的なVRゴーグルではコンシューマユースが先行している中、マイクロソフトがHoloLensをビジネスユースとして打ち出している点について、「まずはビジネスユースで市場の基盤を作ることが重要だと考えています。例えば、いくら優れた性能を持つ車でも、道路がなければ満足に走ることすらままなりません。それと同様に、HoloLensもまずは法人・開発者向けに提供し、エコシステムを構築する必要があるのです」と語った。

また、自室でガジェットなどを配置した際、HoloLensがその空間を認識し、常に同じ位置に同じガジェットが表示されるよう記憶できるが、この空間認識に関しては「特にプリセットなど特殊な操作を行うことなく、私たちが空間に置かれている物を認識するのと同じように一瞬で完了します」という。

さらに、同じホログラムを複数のHoloLensで見ることも可能だ。この機能を利用した事例として、火星探査機「Curiosity」のデータを使い、まるで火星を歩いているかのような体験ができる米航空宇宙局(NASA)の事例を紹介してくれた。

なお、プレオーダーに対するHoloLensの出荷は2017年1月18日を予定しており、価格は開発者向けの「Microsoft HoloLens Development Edition」が33万3800円、法人向けの「Microsoft HoloLens Commercial Suite」が55万5800円、画面操作機器「Clicker」が8800円(いずれも税込み)。Clickerに関して単体での販売は行われないが、開発者向け・法人向けの両方に同梱されているほか、購入者による追加購入は可能となっている。