音楽、演劇、ダンス……様々な分野のトップが集まり、異色のステージを作り上げる公演『Clementia クレメンティア:~相受け入れること、寛容~』(以下、『クレメンティア』)。田代万里生(テノール・ピアノ)、大貫勇輔(ダンサー)、ホリ・ヒロシ(人形舞)、桑山哲也(アコーディオン奏者)、浅野祥(三味線プレーヤー)、クリヤ・マコト(ジャズピアニスト)の6人が出演するこのステージで一体何が生まれようとしているのか? 今回は田代、大貫、桑山の3名に話を聞いた。

(左)■田代万里生
東京芸術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。大学在学中の2003年、東京室内歌劇場公演オペラ『欲望という名の電車』で本格的にオペラ・デビュー。その後09年に『マグリット』でミュージカル・デビューし、多数の名作ミュージカルに出演している。第39回菊田一夫演劇賞受賞。
(中央)■大貫勇輔
7歳よりダンスを始める。祖父は体操のオリンピック強化選手、母や伯母も元体操選手という生粋のサラブレッド。17歳よりプロダンサーとして国内外で数々の作品に出演。バレエ・ジャズ・コンテンポラリー・モダン・ストリート、アクロバット等、多岐にわたるジャンルのダンスを踊り子なす。
(右)■桑山哲也
6歳からアコーディオンを学び、数々のアコーディオンコンテストで優勝。2000年から本格的なソロ活動をはじめ、これまでに10枚のアルバムをリリース。TV、CM、映画等映像作品への参加も数多く、幅広いジャンルのアーティストと共演、その才能は高く評価されている。
撮影:宮田浩文(稽古風景除く)

"寛容"をテーマに集まった6人

――『クレメンティア』は3回目ということですが、もともとどういうきっかけで始まったものなのでしょうか?

大貫:3年前に、僕とプロデューサーによって「何か挑戦的なことやりたいよね」というざっくりしたところから始まりました。その頃たまたま本を読んだ時に、「クレメンティア」という文字が飛び込んできて。これはラテン語で「相受け入れること、寛容」という意味だったんです。

この言葉をテーマにして、異業種の人とステージを作ろうと思いつきました。最初は2014年にマリンバ奏者のSINSKEさんと公演を行い、次の機会につながって2015年は5人の公演に。そして今回は6人にまでなりました。

――どういった基準でこの6人になったのか、理由はあるんですか?

桑山:選ばれし者達ですね(笑)。普段のそれぞれの現場ではおそらく交わらないであろう職種の人たちを、あえて選んで一緒にさせてみようという考えはあったと思います。

田代:メンバー6人の中で、桑山さんとは唯一共演の経験はあるんですが、大貫君とはすれ違いで、やっとできるというところですね。他の方も濃いので、話には聞いていたけど、会ってみたらもっとびっくりです(笑)。

桑山:出演者はみんなそうだと思うんですけど、こういう職業ですから、新しいことに挑戦することが好きなんですよね。話を聞いた時にも「へえ~、試されてるの?」みたいな高揚はあります。新しくプラスになるような出会いへの期待で、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンと(笑)。

――稽古中とのことですが、感触はいかがですか?

大貫:最初は万里生さんと2人で稽古していて、次に桑山さんが入ってくださったんですけど、1人入るだけで大きく変わるんですよね。歌手、ダンサー、アコーディオン奏者が集まって芝居もしているので、異様な感じがすごく心地よいというか。面白いです。

桑山:今まではある程度台本・構成・演出が決まった上で演奏することが多かったのですが、今回はみんなで作り上げていくので。本当に初めての経験で戸惑いはあるんですけど、良い化学反応が起こせると思います。

田代:桑山さんが稽古に来て、アコーディオンを置いて体一つで芝居の稽古しているのを見て、新鮮で感動しましたね。「楽器を置いた!」って(笑)。

桑山:大変だったんですよ! うちの嫁が女優(藤田朋子)なんですけど、稽古へ挨拶に来て、僕の演奏じゃない部分を見て、「芝居のところ、皆さんに迷惑かけないように本当に頑張ってね」と言われて。僕は枕を涙で濡らしましたから。

大貫:嘘だ!(笑)

桑山:「2人は台本を持ってなかったのにあなたは……」と、ぶたれるくらいの勢いで(笑)。

田代:すごく嬉しそうにご覧になってましたよ(笑)。2人の時はリハの音源を鳴らしたりしていたんですけど、桑山さんが入ると生の音量も全然違います。お互いが高め合っていく感じは、ただ再生した音に合わせているのではなく一緒になっている感覚で、パワーが全然違うと思いました。