【レポート】

山崎ナオコーラ×紫原明子、真逆なふたりが家族論・育児論を語る

1 女にとらわれず、妻や母やから脱する生き方

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2016年に母となった今も、性別や役割にとらわれない家族を生きる小説家・山崎ナオコーラさん。かたや、妻や母という肩書の中で生きることを求めながら、シングルマザーとなったことを機に新たな世界を知覚したエッセイスト・紫原明子さん。このほど行われた『家族無計画』(著者: 紫原明子、朝日出版社)刊行記念トークでは、「真逆ですね」という言葉も飛び出した。そんなふたりが思う家族論・育児論とは。


枠にはまらない楽さ・枠にはまる楽さ

山崎ナオコーラ: 1978年福岡県生まれ。國學院大學文学部日本文学科卒業。2004年、「人のセックスを笑うな」で文藝賞を受賞、作家活動を開始。著作に『人のセックスを笑うな』『浮世でランチ』『この世は二人組ではできあがらない』『昼田とハッコウ』『美しい距離』、エッセイ集『指先からソーダ』『かわいい夫』ほか、多数。目標は、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」

紫原さん: 山崎さんは自分の性別を公表されないポリシーでいらっしゃるんですよね。

山崎さん: 一応、言っていない体でやっています(笑)。

紫原さん: 山崎さんはWEBでも連載をされていますが、お子さんの性別もWEBでは非公開にされていますよね。

山崎さん: そういう体で(笑)。

紫原さん: それは何でかって言うと、お子さんが大きくなって、身体的な性と自分が感じている性に不一致があった時に、好きなように自称できるようにと書いていらっしゃいましたよね。

山崎さん: 確かに、うまれた時に病院で医学的な性別は決められますけど、この先はどうなるか分からないでしょうから今書くことではないかなって。

紫原さん: その時、私も「確かにそうだな」って思ったんですよね。ただ、私の場合はそんな考えがなかったので、うちは男の子と女の子がいるんですが、自然に「息子が」「娘が」って言っていました。性別も当たり前に受け止めてしまっていたなと気づかされました。

紫原明子: 1982年福岡県生まれ。13歳と10歳の子を持つシングルマザー。個人ブログ『手の中で膨らむ』が話題となり執筆活動を本格化。著作に『家族無計画』『りこんのこども』。その他、『世界は一人の女を受け止められる』(SOLO)をはじめとし「AM」、「Dress」、「ポリタス」等Webメディアに連載、寄稿など。鷺森アグリ主宰「abooks」プロジェクト'dintje'執筆協力

私は31歳で離婚をしたのですが、離婚してから因果関係を指摘されることがあり、「夫婦がちゃんと会話していたら離婚しないんだよ」とか、「奥さんがちゃんと毎日ご飯を作っていたら離婚はしないよ」などと言われることもありました。でもその時に、「ちょっと待って、私ちゃんとご飯を作っていたよな」と思い、世の中因果関係だけでうまく整理できることばかりじゃない、と思うようになったんですよね。疑うことを知ったと言うか。

ただ、全部を疑ってかかるのって結構、ストイックなことだなって。自分で「女です」って言ってしまうと楽なこともあるじゃないですか。既存の枠組みに入れてしまうと考えなくてもいいこともありますし。だから、山崎さんのように全部"0"から入っているところはカッコいいな、革命家だな、って思うんですよね。

山崎さん: 特に「疑ってかかろう」と力んでいるわけではなくて、ただ単に、私は性別にこだわらない方が楽なんですよね。『家族無計画』を拝読しまして、「私とは結構違うな」と感じたんですね。紫原さんは、女性であることとか、母であることなどを自覚されて意見をもってらっしゃるのかなって思ったので。

紫原さん「離婚を機に知った幸せの求め方」

紫原さん: 私は結婚という状態に憧れていたんですよね。早く、「妻です」「母です」とか言ってみたかったので。そうなると安心するような気がしたんですよ。好きな人と恋愛状態でいるよりも、結婚すればしっかりとした絆で結ばれるような気がして。肩書が付いた方が、その傘の下に入れるような気がしたんですよ。好きなんですよね、そんな肩書に自分をはめることが。どこにも勤めていないのに、"主婦"っていう名刺を作ってもいましたね。名刺をFacebook上で紹介したり、ちょうだいって言ってくれる人に名刺を配ったり。そういう、"社会人ごっこ""主婦ごっご"が好きだったんですよね。

紫原さんは「主婦」という名刺を作ったことも

紫原さん: そういう意味では、離婚は私にとって思いがけないことだったんですよ。「"奥さん"とか"お母さん"とかという肩書の中でずっと生きていたいな」と思っていたんですが、夫婦生活がうまくいかなくなって不本意な結果になったんですけど、枠から外れると意外に楽しいんだなということを、離婚後に初めて分かったような気がします。

それまではみんな、「あの人は結婚しているし、旦那さんはお金を稼いでいるようだし」というような幸せオーラをまとっているように私を見ていて、自分は幸せでないといけないという気持ちがすごくありました。ですが、離婚をして築50年の古いアパートに引っ越して、「この人はまさか幸せではないだろう」という目で見られるようになり。それが意外に楽で、「そう見られている中でこっそり幸せになる方がいいな」と思ったんですよ。枠からはみ出したという開放感をひしひしと感じていますね。

私は結構、枠組みに乗っかるのが楽しいという性質で。着替えじゃないですけど。奥さんとかお母さんとか、コスプレみたいにいろんな自分になれることって楽しそうだなって思っていて。離婚はさすがに興味はなかったですけど、何かしらの状態にはまることに興味をもっていましたね。そういうのはあまり、お好きではないですか?

ホームパーティーを開いて就職活動

山崎さん: 私は好きじゃない、というよりか苦手です。自分でないような状態になるのが……。紫原さんの『家族無計画』では、離婚された時にホームパーティーを開いて就職活動をしたとのことですが、ホームパーティーをして人間関係を築かれたというところが、完全に私とは真逆な人だなって思ったんですよね。

紫原さん: ふたりっきりだったら、絶対自分が話さないといけないけれど、10人いたら自分は話さなくてもよかったりするので、パーティーの方が隠れみのがあるように思うんですけど。私はひとりの人と話すのは苦手で、10人くらいいてみんながわいわいしているのを見てる、私のテリトリーで楽しんでくれているのを見る、というのが好きと言うか。そうしたパーティーの中で、なんとか職を見つけることができました。

山崎さんは今、8カ月になるお子さんがいらっしゃる。私には中3と小5の子どもがいて、今では大きくなったなと思うんですけど、子どもがまだ8カ月の時、私はすごくナーバスになっていました。この子とふたりで山にこもりたいと思ったこともあったんですよね。これから大きくなって、例えば小学生になったらいじめにあってしまうかも、何かの犯罪に巻き込まれてしまうかも。いろんなことを考えると街で暮らすのが怖くなってしまって、「山で人に触れることなく育てたい」みたいに、ピリピリしていた時もあったんですが、山崎さんはそういうことはないですか。

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インデックス

目次
(1) 女にとらわれず、妻や母やから脱する生き方
(2) 子どもをどう社会と向き合わせればいいか
(3) 「出産は私ができたから」--夫に節目を譲ること
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